10年前に失跡した娘にそっくりの幼い少女と出会った母。2018年話題の心理スリラー Then She Was Gone

作者:Lisa Jewell(The Girls in the Garden, I Found You)
ハードカバー: 368ページ
出版社: Atria Books
ISBN-10: 1501192833
発売日: 2018/4/24
適正年齢:R
難易度:上級
ジャンル:心理スリラー
キーワード:失跡、誘拐、被害者の家族、家族崩壊、偽り

 

マック家の夫婦と子供3人は、ごく普通の幸せな家族だった。15歳の末っ子エリーがある日姿を消すまでは。
成績優秀で素晴らしいボーイフレンドがいるエリーが家出をする理由など何もなかった。だが、事件性を疑う証拠がないままに捜索は打ち切られてしまった。母親のローレルは、娘を諦めることができず、自分と同じだけ苦しまない夫に憎しみすら感じるようになる。そして、3年後に夫婦は離婚し、マック家族は崩壊した。

それから10年後、初めてエリーの事件に関わる証拠が見つかった。元夫はすでに新しいパートナーを見つけ、残った子供たち2人もそれぞれの人生を歩んでいた。自分自身も新しい人生を始める決意をしたローレルは、カフェでチャーミングな中年男性を知り合った。数学者だというその男性は幼い娘を独りで育てていた。9歳のポピーは、ローレルの娘エリーにそっくりだったが、ポピーの母親は彼が短期間だけつきあった女性だという。その女性はエリーではなかった。

新しいボーイフレンドとポピーに惹かれ、長年ぶりに幸せの感覚を取り戻してきたローレルだが、エリーの事件が影を落とし続ける……。

2018年注目のミステリ/スリラーのひとつであり、読者の評価も高いようだが、私は特に面白いと思わなかった。というのは、最後まで「驚き」がないのだ。ミステリや心理スリラーをよく読む人なら途中で何が起こったのかわかってしまう。「それだけではないはず」と期待して読み続けたのだが、結局ツイストがないまま終わってしまった。

気持ち悪く見える人物が、結局気持ち悪い人だったというのも芸がない。

それに加えて、最後まで読んでも救いがない。

娘を失って母親としての機能ができなくなった者は、誰からも愛されなくなって当然なのか?
自分の感情は押し殺して、物分りある妻、自己犠牲をいとわない母として生きることができなかったら、一生罰されるべきなのか?
残った子供たちの心境はわかる。さっさと気持ちを切り替えて新しい人生を歩めた父親のほうが、「優しい人」として古い愛も新しい愛も得られるというのは、現実的なのかもしれない。でも、フィクションでは不公平に思えてならない。

いやはや母親というのは損なものですなあ。女性作家からも罰されるのだから。

……などと、プロットとは関係ない読後感に浸った心理スリラーであった。

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 多くの職を体験し、東京で外資系医療用装具会社勤務後、香港を経て1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 100 reviewer.

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