リッチな高校生の恋愛ドラマ『ゴシップガール』を暗い心理サスペンスにしたような All These Beautiful Strangers

作者:Elizabeth Klehfoth
ペーパーバック: 512ページ
出版社: Penguin
ISBN-10: 0241329493
発売日: 2018/7/12
適正年齢:PG15
難易度:上級(ネイティブの普通レベル)
ジャンル:心理サスペンス
テーマ/キーワード:家族の秘密、失跡、殺人、有名私立高校、秘密社交クラブ、アメリカの上流階級、家族の秘密、YA、ページターナー

アメリカの名門大学や高校には、悪名高い「秘密社交クラブ」があることが知られている。たとえば、イェール大学のスカル・アンド・ボーンズ(Skull and Bones)だ。そのクラブにいったん入ったら強力なコネクションができる。元大統領のジョージWHブッシュ、ジョージ・ブッシュ、元大統領候補で元国務長官のジョン・ケリーなど、スカル・アンド・ボーンズのメンバーは政界や経済界でパワフルな仕事やポジションを得ている。

これらの秘密社交クラブは招待オンリーで、たいていはすでにコネを持つ裕福な家族の子弟だ。だが、招待されても厳しいイニシエーションを通過しないとメンバーにはなれない。そのイニシエーションは、極端なイジメに近いものであり、時には危険なものだと言われている。

Elizabeth Klehfothのデビュー作『All These Beautiful Strangers』では、寄宿制の名門私立高校の秘密社交クラブ「A」と、そのイニシエーションがストーリーの中心にある。

ニューヨークの不動産王アリスター・キャロウェイを父に持つ17歳の女子高生チャーリー(ニックネーム)は、待ちに待った「A」からの招待状を受け取り安堵した。Aに属するのは、父や従兄弟のようにキャロウェイ家のメンバーとしての責務でもある。だが、イニシエーションは簡単なものではなかった。チャーリーは、第一試験として校長が誰よりも愛する犬からダイヤモンドつきの首輪を盗むよう命じられる。

第一試験に成功したチャーリーは、Aのイニシエーションが度を越したイタズラというよりも他人の一生を傷つけるような陰湿なものであることに居心地の悪さを覚えるようになる。だが、イニシエーションに失敗した者や、拒否した者は、Aが汚名を着せて退学させられる。また、Aについて明かすのは、最低の「裏切り」とみなされている。汚名を着せられた者も、Aの秘密をばらすよりもは、黙って退学することを選ぶのだった。

チャーリーは、母親のグレースが自分と幼い妹を捨てて家出をしたと信じていたが、過去にこの学校で自殺した少年が、当時の母のボーイフレンドでAの候補者だったことを知る。しかも、この少年は父の親友だったらしいのだ。この少年の死と母の失跡は、どこかでつながっているかもしれない。そして、父は嘘をついている。

事件と家族の過去について知り始めたチャーリーは、貴族のように傲慢な言動を取るAのメンバーや家族、そして、それに染められている自分の生き方について見直すようになる……。

チャーリーが通う寄宿制の名門私立高校は、テレビドラマになった『ゴシップガール』の世界を連想させる。アメリカの寄宿制名門私立高校を舞台にした小説を読むたびに「わが子を通わせなくて良かった」と思うのだが、この作品もそのひとつだ。親が大金持ちの高校生は、ほんとうに嫌な奴ばかりなのだ。

大金を持って家出をした母からは見捨てられたと感じ、父からは冷たくあしらわれているチャーリーはそれなりに気の毒だ。経済的には恵まれているが、生い立ちの事情から孤独で自己憐憫が強い。しかし、他人を利用するだけで思いやりに欠けるチャーリーに好感を抱くのは難しい。そのおかげで、この本を放棄したくなる読者もいるだろう。だが、がまんして最後まで読んでほしい。これは、チャーリーが変貌するために重要な設定なのだから。

この本は過去の殺人をひもとく心理サスペンスだが、チャーリーが最初から良い子ではなく、自分でも嫌な思いをして学んでいくところに、青春小説としての価値もある。

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 多くの職を体験し、東京で外資系医療用装具会社勤務後、香港を経て1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 100 reviewer.

リッチな高校生の恋愛ドラマ『ゴシップガール』を暗い心理サスペンスにしたような All These Beautiful Strangers」への1件のフィードバック

  1. こういう物語は日本の漫画にめちゃくちゃ多い設定ですね。生徒会が学校を牛耳ってるとか。
    最近、ネットコミックを通じて中国や台湾、韓国の漫画も読めるようになってきてるんですが、この手の作品って一つのパターンなのか結構多い設定なんですよね。
    日本の「花より団子」の影響が大きいのではないかとの話もあります。
    また、昨今韓国では財閥の権威が問題になっていて学校にもその影響が及んでるとか、中華社会は血縁によるカーストが社会に根差していて、そのコネクションに繋がらないと良いポジションが得られないとかあるようなので、そういう社会背景からもこの手の作品が支持されるのかな?と思われます。
    まぁ、日本も偏差値の高い伝統校や進学校や国立やTOPの公立高校には何かあったりしてね。
    やけに官僚や医者のご子息が多いし、必ず東大コースだし、何より本当は偏差値って学校の努力次第で上がると言い難く、初めから意図的に作られてるところもあるようだ。
    ちなみに昨今は、偏差値で学校を見て差別する傾向が以前よりも強まっており、今までそこまで偏差値でとやかく言われなかった大学までもがある一定の偏差値とそれなりに知られてる名前の学校以外はFラン大学とさげずむ傾向がある。

    後+αでアジアの学園もの漫画で多い設定、容姿による差別とそれに伴う学校全体の排除と虐め。

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