巧妙すぎるプロットがかえって残念な心理サスペンス Let Me Lie

作者:Clare Mackintosh
ハードカバー: 400ページ
出版社: Berkley
ISBN-10: 0451490533
発売日: 2018/3/13
適正年齢:PG15
難易度:上級(ネイティブの普通レベル)
ジャンル:心理サスペンス
テーマ/キーワード:偽装事件、投身自殺、ドメスティック・バイオレンス、家族の秘密

 

父親の投身自殺の数カ月後に同じ方法で母を失った25歳のアナ(Anna)は、そのショックから立ち直るためにかかった心理セラピストのマーク(Mark)と恋をし、計画しなかった妊娠をして母になった。両親の住んでいた家で同居しているマークは思いやりがあるパートナーであり、優しい父親だが、アナは結婚には踏み切れないでいる。

母の自殺から1年たった日、アナは見知らぬ者からカードを受け取る。その文面は、両親が自殺していないことを匂わすものだった。アナは第一線を退いた警察官のマレイ(Murray)に「両親は自殺していない。殺されたにちがいない」と捜査を再開するよう依頼した。

境界性パーソナリティ障害で入退院を繰り返す妻がいるマレイは、アナに同情し、自分にはその権利がないと知りながらも個人的に調査を始めた。通常のルートでリクエストをしたら、すでに解決した事件として調査を却下されるのがわかっていたからだ。

アナの両親の自殺は、ほかに解釈の方法がないほどシンプルなものに見えた。しかし、マレイが調査を進めるうちに、疑問点が次々に浮かび上がってきた。

それと同時に、アナの周りで脅迫めいた不気味な出来事が起き始めた。そして、アナは母の幽霊を存在を感じるようになる……。

I Let You Go(読んだのに、レビューを書くのを忘れていたのに今気づいたところ)、I See Youで有名な英国の女流作家 Clare Mackintoshの最新作Let Me Lieは、2018年注目の作品のひとつでもある。実際にあった偽装事件から心理的な興味を抱いて書いたということであり、その想像力には感心する。また、「信頼できない」複数の語り手で進行する手法や、読者にわざと何かを信じさせて後で裏切るやり口など、ベテランらしい巧妙さを感じる。

ただし、I See Youもそうだったが、「驚き」のエンディングは狙いすぎであり、余計だと思う。また、精神的に不安定な妻をひたすら愛するマレイはすばらしい登場人物だったが、そのほかの人物には一貫性を感じなかった。そもそも心理セラピストが患者に手を出すのは、途中から治療を中止したとしても違法ではないか。それを含め、プロットのためだとは思うけれど理屈に合わないことが多くて気になって仕方がなかった。

この複雑なプロットを小説として完成させたことに対しては5つ星をあげたいが、巧妙さが見えすぎたので減点せざるを得ない。

2 Comments

  1. 「共犯者はあの人物か、いや、この人物か」と読ませるページターナーで、ドキドキさせられ、予想も裏切られておもしろかったです。私が暮らしている地方が舞台になっているので、そこにも引き込まれました。「巧妙さが見えすぎた」という渡辺さんの講評には納得です。最後にドーンと嫌ミスにするのが、この作家のパターンでしょうか。『I See You』は読みましたが、デビュー作(?)の『I Let You Go』は未読です。

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