奴隷の歴史小説を超えて幻想的な世界を作り出したブッカー賞最終候補作 Washington Black 

作者:ESI EDUGYAN
ハードカバー: 352ページ
出版社: Knopf
ISBN-10: 0525521429
ISBN-13: 978-0525521426
発売日: 2018/9/18
適正年齢:PG 15(バイオレンス、性的コンテンツ。だが過剰な描写はない)
難易度:超上級(文学的な表現が多く、慣れていない読者には流れが理解しにくい)
ジャンル:文芸小説(歴史、スペキュラティブ・フィクション)
キーワード:19世紀バルバトス、サトウキビ・プランテーション、奴隷、
賞:2018年ブッカー賞最終候補

黒人少年ジョージ・ワシントン・ブラックは、19世紀前半バルバトスのサトウキビ・プランテーションで奴隷として生まれた。親の記憶などはない。5歳のころまで住んでいた小屋から別の小屋に移され、そこで出会ったビッグキット(Big Kit)という黒人女性から守られて育った。男性より大柄でアフリカからの魔法を操ると信じられているビッグキットに逆らう者はいなかったが、ワシントンはビッグキットを愛すると同時に恐れてもいた。

ワシントンが11歳のころ、年老いたプランテーションのオーナーが死に、イギリス人の甥エラスマス・ワイルドが相続した。新しいオーナーのエラスマスは残酷な男で、ほんの小さな失敗や病気で奴隷たちに暴力を振るい、惨殺する。その現状をビッグキットは暗い満足感で捉える。「死は扉だ
。彼女は僕にそう理解してもらいたいのだ」と11歳のワシントンは考える。

そのワシントンに、科学にしか興味がないオーナーの弟ティッチ(Titch)が関心を持ち、アシスタントの仕事を与える。彼が作っている飛行船の「重し」としてちょうどいいサイズだというのだ。

ティッチのおかげでワシントンは読み書きを習い、スケッチの優れた才能があることもわかる。だが、オーナーの弟から特別扱いされたことでワシントンはビッグキットから見放され、オーナーやオーナーの従弟からの暴力のターゲットになる。

大怪我をし、次には死が待ち構えていることがわかったとき、ティッチはワシントンを連れて飛行船でバルバトスを脱出する……。

カナダ人作家Esi EdugyanのWashington Blackは、奴隷に関する歴史小説かと思ったらそうでもなく、飛行船のあたりで「マジックリアリズムの作品か?」と思ったら、やはりそうでもない。だが、既存のカテゴリに収まらない自由さがあり、そこが魅力だ。そして、何よりも文章が良い。じっくり味わいながら読み直したい本だ。

2件のコメント

  1. 10代の数年間に世界中を転々としながら、ワシントンが大変な経験をしたそれぞれのエピソードは興味深く読んだのですが、物語全体としては捉えどころがなく、ぼんやりとした印象が残りました。ワシントンが悶々と考えていたティッチとの関係について(私が)抱いた疑問にも、はっきりとした答えは示されなくて、ちょっとモヤモヤした気分になっています。私とは相性が良くない本だったかもしれません。

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  2. 書き忘れました。私が読んだ Serpent’s Tail 社版の表紙と裏表紙のデザインが素敵で、そこはすごく気に入っています(笑)。

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