『縞模様のパジャマの少年』の作者が書いた、パトリシア・ハイスミス的な文芸スリラー A Ladder to the Sky

作者:John Boyne(The Boy in the Striped Pajamas)
ハードカバー: 368ページ
出版社: Doubleday
ISBN-10: 085752349X
ISBN-13: 978-0857523495
発売日: 2018/8/9
適正年齢:PG15
難易度:上級
ジャンル:文芸小説/心理スリラー
キーワード/テーマ:作家、欲望、犯罪

John Boyne(ジョン・ボイン)という名前に見覚えがある人はけっこういるだろう。映画化もされた児童小説『The Boy in the Striped Pajamas(縞模様のパジャマの少年)』の作者だ。

だが彼の最新作A Ladder to the Skyに同じような「感動」を期待する読者は、仰天することだろう。まったく異なる類の作品だからだ。驚くかもしれないが、文学的な味わいとしては、この最新作のほうがずっと優れている。「異なる」ことを知って臨むと、作家としての彼の成熟のほうに感動するに違いない。

A Ladder to the Skyの主人公モーリス・スウィフト(Maurice Swift)の野望はただひとつ。有名作家になることだ。類まれなる美貌に恵まれ、優れた文章を書く技術もあるモーリスだが、致命的な欠陥があった。それは、「伝えるべきオリジナルのストーリーを見つけられない」ということだ。

若きモーリスは、老いたゲイの有名作家の孤独につけこんで懇意になり、作家が長年隠してきた過去を聞き出してベストセラー作家としてデビューする。そして、有名作家は汚名を着せられたまま孤独な死を遂げる。作家になったものの新たなストーリーを作り出せないモーリスは、作家としての地位を維持するために「次のストーリー」を探し続ける……。

読み始めてしばらくして、「モーリスはパトリシア・ハイスミスのThe Talented Mr. Ripleyのトム・リプリーだ!」と思った。その理由は、両方の小説を読めばよくわかるはずだ。しかも、ジョン・ボインがわざとやっているとしか思えない。また、知的でひねりがあるユーモアのセンスはオスカー・ワイルド的でもある。というか、「素晴らしい文芸小説の作者である」ためなら何でもやるモーリスは、若さと美貌を保つことに執着したドリアン・グレイとよく似ている。

感動的な児童小説とダークで皮肉たっぷりの大人向け小説の両方を書いたワイルドのことを思うと、ジョン・ボインは現代版ワイルドなのかもしれない。そう思わせるほど、この小説は精巧に作られている。

邪悪で救いのない心理スリラーでありながら、文芸小説を読む愉しさをとことん味わわせてくれる特上の一品である。

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