極めてアメリカ的な2018年の意外なベストセラー Girl, Wash Your Face

作者:Rachel Hollis
ハードカバー: 220ページ
出版社: Thomas Nelson (ハーパーコリンズ社のキリスト教ジャンル専門ブランド)
ISBN-10: 9781400201655
ISBN-13: 978-1400201655
ASIN: 1400201659
発売日: 2018/2/6
適正年齢:PG15(性についての話題あり)
難易度:中級+(文章そのものはシンプル)
ジャンル:自己啓発・アドバイス/回想録
キーワード:ライフスタイル指導、TheChicSite.com、宗教(キリスト教)、家族、恋愛、夫婦、人生アドバイス、女性対象

2018年に最も売れたのはミシェル・オバマ元大統領夫人の回想録『Becoming』だった。だが、それは予想範囲でもあった。

トランプ関連の最初の大型暴露本『Fire and Fury』やボブ・ウッドワードの『Fea』もベストセラーになったが、それも予想されたものだった。そして、時間が経つにつれて売上は落ちていった。

誰も売れることを予想していなかったにもかかわらず、2018年1月の発売以降ジワジワとベストセラーリストを上昇してゆき、ノンフィクション部門で全米のトップセラーになったのが、この『Girl, Wash Your Face』だ。

興味を抱いてこの本を読んだのは2018年の半ばだったのだが、多くのベストセラーがリストを滑り落ちていく中でもこの本の売れ行きは落ちなかった。発売から1年経った1月半ばでも、Girl, Wash Your Faceのハードカバーは週に4万部近く売れており、ミシェル・オバマの記録的ベストセラー『Becoming』に続く2位を保っている。

Girl, Wash Your Faceの作者レイチェル・ホリス(Rachel Hollis)は、ソーシャルメディアでライフスタイルのグルとして有名になった4人の子どもを持つ35歳の母親だ。

カリフォルニア州のベーカーズフィールドで育ったホリスは、女優になる夢を見て単独ロサンゼルスに移ったが、早いうちに「イベントプランナー」に方向転換し、30歳になるまでにブラッドリー・クーパーやアル・ゴアのパーティを企画するほど成功していた。

だが、ホリスをもっと有名にしたのは、最初のうち彼女が趣味で始めたライフスタイルのブログだった。それが人気になり、ホリスは再び方向転換をした。ホリスはライフスタイルのサイトTheChicSite.comを運営するかたわらで、PRや出版編集会社も経営し、主に女性を対象にした自己啓発イベントを行っている。かつてディズニーの重役だった夫はホリスの会社のCEOになり、現在では一家はテキサス州に住んでいる。

ホリスの人気の秘密は、普通の読者にも手が届きそうなホリスのキラキラ度だ。

ホリスはキュートだが、女優を目指す女性が集まるロサンゼルスに掃いて捨てるほど存在する完璧な美女ではない。スリムだが、モデルのような体型でもない。4人の子どもを産んだ結果としての妊娠線とか少したるんだお腹も披露したりする。

でも、たまには元ディズニー重役だった長身ハンサムな夫とのレッドカーペットの写真も載せて、夢も与えてくれる。

簡単だけれど、他人に印象づけられそうなパーティのコツも教えてくれる。

普段着でぼんやりしている姿や、夫や子どもとじゃれあっている姿は心温まる。

子育ての大変さや、うまくいかないことも、打ち明けてくれるので、「こんなにハッピーそうな人でも自分と同じくらい大変なのだ」と思わせてくれる。

でも、これらはすべて、巧みにコントロールされた「普通らしさ」なのである。読者に「これくらいなら、私にも努力すれば届くかもしれない」と思わせ、その上でレッドカーペットを歩く夢も見させてくれるのだ。

ホリスのGirl, Wash Your Faceを最初にベストセラーに押し上げたのは、そんな彼女のファンである。本のセールスが衰えないのは、ベストセラーで知った読者が新たにホリスのファンになっているからでもある。

ファンというよりも、「信者」と言うほうが正しいかもしれない。

というのも、本書は、ハーパーコリンズ社の中でもキリスト教関連の本を専門に扱うブランドのThomas Nelsonから出版されており、多くの図書情報では「宗教本」にカテゴライズされているのだ。全体的にはそれほど宗教的ではないが、ところどころに聖書からの引用が入っており、キリスト教徒に受け入れられやすいトーンだ。

ホリスが読者に送る最大のメッセージは、「あなたがどれだけ幸せになれるか、それを決めるのはあなた。突き詰めると、あなたを幸せにするのはあなたの責任」というものだ。この「愛の鞭」的なtough loveは、とてもアメリカ的な考え方だ。

その一例として、ホリスは夫との恋愛での辛かった思い出も率直に告白している。キリスト教の教育を受けた純粋無垢な十代のホリスが都会に移り、仕事ができる年上のプレイボーイと恋に落ち、彼に嫌われないよう言いなりになる。彼からガールフレンドではなく便利なセフレのように扱われ、自尊心を失い、どん底まで来てようやくホリスは自分の価値を思い出す。自分の価値に値する扱いができない相手とは付き合わない決意をし、それを告げることで彼はようやく心を入れ替える。プレイボーイだった彼氏がお手本のような夫と父親に変貌するストーリーはアメリカでよく売れているロマンス小説の筋書きそのものだ。ここにも読者は惹かれるのではないかと思う。

ホリスの本の主な読者は白人女性だ。そして、保守やキリスト教徒が多い中西部や南部での売れ行きが良いらしい。そして、ロマンス小説がよく売れている場所とも一致している。

その一方、有色人種や西海岸、東海岸のリベラルな読者からは「白人女性にとってはこの程度のことが『苦難』なのね。その程度で『幸せは自分の責任』なんて言わないでほしいわ。なんて恵まれていることか」という批判もかなりある。

そういった批判も含めて、とてもアメリカらしいベストセラーである。

 

P.S. 余談だが、ホリスの背後にある本棚がジャンルではなく色(青、緑、白、黄色、茶色)で仕分けされているのが気になって仕方がない私であった😂

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