作者:Sonya Lalli(デビュー作家)
ペーパーバック: 352ページ
出版社: Berkley
ISBN-10: 0451490940
ISBN-13: 978-0451490940
発売日: 2019/2/5
適正年齢:R
難易度:中級+
ジャンル:ラブロマンス/chick lit
キーワード:英語圏のインド系移民、結婚、arranged marriage(見合い結婚)、親子関係、LGBTQ+、ゲイ、レズビアン、親からの心理的圧迫
レイナは、カナダに住む白人とインド系のミックスだが、生まれる前から白人の父の存在はなく、インド系移民のコミュニティで育った。高校生のときに妊娠してレイナを産んだ母は、彼女が小さいときに家を出てしまい、ナニと呼ぶ祖母が母親代わりにレイナを育てた。
夫が亡くなった後もインド料理屋を経営し続けているナニは、投資アナリストとして経済的に独立しているレイナの成功を自慢しているが、同時に孫娘が未婚だということを案じている。ナニにしつこく結婚を促されたレイナは、根負けして「30になっても独身ならarranged marriage(インド式の見合い結婚)をする」と約束した。結婚したかった相手と別れたうえに約束した年齢が目前に迫ったレイナは、ナニが作った候補のリストに従って見合いを試してみるが、いずれもどこかに欠陥がある。
レイナが見合い相手に手厳しい本当の理由は、別れた恋人を忘れられないからだった。結婚よりも仕事を優先する彼がいつか気持ちを変えてくれることを願っているレイナは、そんな自分を恥じて誰にも打ち明けられない。最も親しかった親友とナニを遠ざけてしまう。そして、孫娘がレズビアンだから結婚したくないのだというナニの誤解を訂正しない。
ナニの口は軽くてインド系コミュニティは小さいので、レイナの「秘密」はあっという間に広まってしまう……。
英語圏の移民の物語は、異文化体験ができるのでそこが楽しい。しかも、30歳近い独身女性がいろいろなお見合いをするというのは面白そうだ。そう思って読んだのだが、正直、がっかりする作品だった。
まず主人公のレイナの考え方や行動の選択には呆れ返るばかりであり、ほとんど同情の余地がない。
「インド系コミュニティはLGBTQ+に理解がない」という特徴も、たぶん事実であり、それも興味深い情報だ。しかし、レイナが嘘をつき続けたことを正当化する理由はまったくない。それに、20世紀後半ならコメディに使えたかもしれないが、認識が広まった21世紀の若者である作者がこれをコメディ的なシチュエーションに使ったのは無神経だと思った。同じ情報を提供するにしても、別のやり方があったはずだ。
カナダのインド系コミュニティの描写は面白かったが、主人公に感情移入できないという点で、ラブコメとしては失敗だったと思う。
作者は、コロンビア大学で法律を学び、ロンドン大学シティ校で文芸創作と出版の修士号を取ったという20代のインド系カナダ人女性なので、今後の作品に期待したい。