障がいがある子供を持つ親と移民家族の苦悩を描く、法廷小説 Miracle Creek

作者:Angie Kim
ハードカバー: 368 pages
Publisher: Sarah Crichton Books
ISBN-10: 0374156026
ISBN-13: 978-0374156022
適正年齢:R(大人向けのテーマ。多くはないが性的な話題とシーンあり)
難易度:上級(読みやすいページターナーだが、ニュアンスを理解するためには社会的な背景の知識が必要)
ジャンル:ミステリ/法廷小説
キーワード:HBOT(高圧酸素療法)、民間療法、しょうがい児の親、移民の家族
2019年 これを読まずして年は越せないで賞 候補

韓国からの移民であるYoo一家は、アジア系の住民がほとんどいないバージニア州の田舎町Miracle CreekでHBOT(高圧酸素療法)の治療センターを経営していた。利用者の多くは、病院がHBOTの対象として認めない自閉症スペクトラムの子供などだ。この施設のHBOTは、サブマリンのような多人数用大型装置であり、複数の親子が一緒に治療を受けられるようになっていた。そして、子供が飽きないようにDVDを見ることもできる。

ある夜、この施設でHBOT稼働中に火災が起こり、サブマリンに入っていた大人一人と子供一人が死亡した。そして、患者を救うために火災に何度も飛び込んだ経営者のPak Yooは重症をおって半身不随になり、Yooの高校生の娘Maryも何ヶ月も昏睡状態になった。

事件から1年が経ち、この事件の裁判が始まった。

被告は、亡くなった少年の母親のElizabethだ。火災はタバコの火によって起こったのだが、それは、わざと酸素が送り込まれるチューブのところにつけられた「放火」だった。その夜に限って息子と一緒にサブマリンに入らなかったElizabethは、森でワインを飲み、タバコを吸い、眠り込んでいたところを発見された。また、彼女が息子の死を望むような発言をしたことや、直前に亡くなった別の母親と口論をしていたことが報告されていた。

裁判が始まったとき、法廷で嘆きや悔恨の感情をまったく見せないElizabethの罪を疑う者はほとんどいない状況だった。検察官も楽勝だという態度だった。

だが、裁判が進むにつれ、証言台に立った関係者や、家族たちの間で、これまでそれぞれが隠してきた秘密が明らかになっていく。そこから顕になってきた「真実」と、それでも隠し続けた真実が、さらに多くの不幸を生み出していく……。

作者のAngie Kimは、小学生の頃に韓国からアメリカに移住し、スタンフォード大学を卒業後にハーバード大学ロースクールで学び、法廷弁護士になった経歴を持つ。ハーバード大学ロースクールでは、ハーバード・ロー・レビューの編集者になったという輝かしい達成をしたKimだが、3人の子供のうちひとりが難病になり、以前なら想像もしなかった民間療法のHBOTを息子にさせるようになった。これらの体験が、この小説にすべて活かされている。

この小説には、差別や嘘や羨みなどふつうの人間が持つ闇の部分が「これでもか」というほど出てくる。アジア系の差別もしかりだが、子供をアメリカで成功させるためなら何でもするアジア系の親のステレオタイプも作者は隠すことなく描いている。障がいがある子供の親の正直な苦悩や、親たちの間での嫉妬や競争心もそうだ。それゆえにすべての登場人物がリアリスティックで、読んでいて苦しくなる。

救いようがないストーリーだが、ベストセラーになる価値がある法廷小説だ。

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