ファンがルールを作り、統治システムを作るビジネスモデル Fanocracy

作者:David Meerman Scott, Reiko Scott 共著、
ハードカバー: 304ページ
出版社: Portfolio (ペンギン・ランダムハウス)
ISBN-10: 0593084004
ISBN-13: 978-0593084007
発売日: 2020/1/7
適正年齢:PG(一般向けだが、要注意コンテンツなし)
難易度:中級+〜上級(全体的にストレートで理解しやすい英語だが、Reiko執筆部分はやや上級)
ジャンル:ビジネス/実用書
キーワード/テーマ:Fanocracy、ファノクラシー、ファンダム、ファン心理、ナラティヴ医療、リアルな繋がり、企業と顧客、企業と従業員

ュージシャンや俳優にとって、ファンは非常に重要な存在だ。漫画家やアーティストも、ファンがいるからこそ仕事を続けることができる。

グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』や『月をマーケティングする』(どちらも日経BP社)の共著者でマーケティングストラテジストの夫と、コロンビア大学で脳科学を選考し、ボストン大学メディカルスクールで医学を学んでいる娘は、どちらも多様な分野でかなり深入りしている「ファン」だ。夫は、ロックミュージックとアポロ計画に関しては度を越した収集家であり、娘は自作のコスプレでコミックコンベンションに行くオタクである。だから、ファン心理に関しては、直接的にも間接的にもかなり通じている。

けれども、ファンやファン心理に支えられているのはアーティストだけではない。実際には、B to B(企業を顧客にする企業)もファン心理に支えられていて、それなしには成功を維持することができない。アメリカでは医療の現場ですら、ファン心理が影響を与えている。

私たち家族は夕食の席などでそういった会話を交わすようになっていたのだが、その話題のひとつが、「ソーシャルメディアの普及で、人のコミュニケーションが表層化し、過剰になってきた。振り子が極端な方向に行ったいま、人々はもっと本質的で自然な、リアルな繋がりを求めるようになっているのではないか」ということだ。オンラインでの繋がりだけでなく、実際にコンサートに行ったり、コミックコンベンションに行ったり、読書会に属したり、モーターショーに行ったりして、同じ趣味を持っている人と繋がり、触れ合う欲求が再び高まっている。

夫と娘は、年齢も、ジェンダーも、人種(白人とアジア系ハーフ)も異なる。ゆえに、体験も、視点も異なる。その異なる視点で、ファンダムについて本を書く企画が持ち上がったのが5年前だ。常に多忙でありながらも遊びもちゃんとこなす父と娘の2人組が5年かけて取材し、ファンとしての自分の体験を交えながら書き終えたのが、このユニークなビジネス書Fanocracyである。

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トークイベントで父と娘の共演

Fanocracy(ファノクラシー)Fancracyを繋げた造語だ。cracy(クラシー)は、デモクラシー(民主主義、民主政治)やアリストクラシー(貴族制度)、ビューロクラシー(官僚制度)など政治や制度、統治を表す。つまり、ファノクラシーとは、ファンがルールを作り、導き、統治することを表現している。

すでにファンダムに詳しい人は、この本を読むと、「ああ、この世界には馴染みがある。知っている」と思う箇所があるはずだ。

けれども、この本はそこで終わらない。

社員を会社のファンにさせることで、会社を成長させ、それを維持するのもファノクラシーだ。日本には「ブラック企業」という独自の表現があるが、企業が成長を続けるためには「ブラック企業」ではいけないことの理由がここから学べる。

また、医師と患者の関わり合いにもファノクラシーがある。ビジネス書というと企業のビジネスを連想しがちだが、私のようにフリーランスで文章を書いたり、本を紹介している者にも深いかかわりがあるのがファノクラシーだ。

夫と娘の共著だからというだけでなく、ギスギスした今の世の中に、リアルで楽観的で、しかも役立つビジネスの提案をしている意味で、とてもお薦めの1冊だ。

Passionate Fans: The Most Powerful Marketing Force in the World from David Meerman Scott on Vimeo.

本の中には私も登場するので、ぜひみつけて「あっ、いた!」と一緒にニヤニヤしていただければ嬉しいです😁

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