高校生向けなのに大人向けのベストセラーより凝っているミステリ A Good Girl’s Guide to Murder

  • 作者:Holly Jackson
    ペーパーバック : 448ページ
    ISBN-10 : 1405293187
  • ISBN-13 : 978-1405293181
  • 発売日 : 2019/5/2
    適正年齢:PG12(中学生から高校生向け)
    難易度:上級 7/10
    ジャンル:YA(ヤングアダルト)/ミステリ
    キーワード:高校、殺人、濡れ衣、青春小説

大学進学を控えた女子高校生のPippaは、指導教師からの「これはセンシティブなトピックだから」という懸念にも関わらず、特別プロジェクトのテーマに5年前の殺人事件選んだ。高校のシニアで人気者だった女子高生のAndie BellをボーイフレンドのSal Singhが殺害し、Salは犯行を自白するメモを残して自殺したという事件だった。

学業優秀でチャラチャラしたことにまったく興味がないPippaは、高校では変わり者だった。町の住民たちがSalや残された家族をおぞましい者として扱うなか、PippaはずっとSalの無実を信じていた。そして、特別プロジェクトを言い訳にして、真犯人を見つけようとする。

イェール大学への進学が決まっていたSalは、学業にもスポーツにも長けていて、誰にも優しい人格者でもあった。インド系移民の両親が将来への夢をかけていた兄が亡くなった後、執拗な差別や嫌がらせの対象になったRaviは、高校を退学し、アルバイトに出かける以外は引きこもりのような状態になっていた。町民からいまだに差別を受けているRaviは、いきなり戸口に現れたPippaを最初は拒否した。だが、兄の無実を信じ、実際に有効な証拠を掘り出してくるPippaに協力するようになる。

Andie殺人事件には、警察が無視した多くの謎が残っていた。まず、Andieの死体はいまだに見つかっていない。そして、最初のうちはただの「行方不明」だったのに、メディアに現れた地元の有力者の父親は「She was」と過去形を使ったのだ。つまり、初期の時点ですでにAndieが死んでいると決めつけていたことになる。また、Andieの父親が職を世話した若い警察官が事件の窓口になっていたのも怪しかった。町民たちは犠牲者のAndieをまるで天使のようにみなしているが、実際の彼女はそうではなかったこともわかってくる。当時記事を書いた地元のジャーナリストも、Salへの人種差別むき出しだった。

ジャーナリストを目指すPippaが真相に迫っていくうち、脅迫状を受け取るようになる。軽く無視していたPippだが、無視できない悲劇が起こる……。

忙しかったりフラストレーションがたまったりすると、ついミステリや心理スリラーに逃げてしまう私なので、かなりの数のミステリを読んでいる。あまりにも読みすぎているので、かなり早いうちに何が起こっているのか見えてしまうのが残念なことがある。「驚きの結末!」を用意しているものもあるが、驚かせるために入れただけで、全体的に意味をなさないものも多い。そういう驚きには苛立つだけだ。

A Good Girl’s Guide to Murderは、「わかってきたぞ」と思うたびに、うまくそれを裏切ってくれる。しかも、何度も裏切ってくれる。そして、最終的にそれらの裏切りがちゃんと意味をなす。Jacksonのデビュー作だが、だからこそ細かいところまで手をかけているのがわかる。優等生のPippaや引きこもり青年だったRaviというメインのキャラもリアリティがあっていい。

ジャンルとしては高校生対象のYAミステリだが、最近の大人向けのベストセラーの多くより凝っていて面白かった。去年発売されたものだが、今年になってから、ジワジワと(ネットの口コミで)人気上昇している。

作者はロンドン在住のイギリス人だということだが、たぶんコネチカット州に住んでいたことがあるのだろう。舞台のFairviewはたぶんFairfieldで、その他の町はぜんぶ実存する名前を使っている。夫の実家があり、親戚が住んでいる地域なので、それらの場所を目に浮かべるのも楽しかった。

文字で読むほうが、プロジェクトのところはわかりやすいかもしれない。けれども、オーディオブックは、取材のところなど工夫しているので、ドラマのように聴ける。自分に合った方法で試してほしい。

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