豪華なマンハッタンのアパートメントビルで孤独な女性が体験する不気味な出来事。2019年のベストセラーミステリ Lock Every Door

作者:Riley Sager
発売日 : 2019/7/2
ハードカバー : 384ページ
ISBN-10 : 1524745146
ISBN-13 : 978-1524745141
出版社 : Dutton 
適正年齢:PG15+
難易度:上級 7/10
ジャンル:ミステリ/心理スリラー
キーワード:格差社会、ニューヨーク、失踪事件

今住んでいるアパートから出る必要ができたJulesは別の場所を探すが、ニューヨークの不動産はあまりにも高く、部屋をシェアするルームメイトもそう簡単には見つからない。家族がいないJulesには、頼る人もいない。そんなとき、信じられないような幸運が転がり込む。マンハッタンでも指折りの豪華なアパートメントビルで、持ち主が留守の間に滞在して面倒をみる「アパートメント・シッター」ができるというのだ。大金持ちが住むアパートメントで暮らせるだけでなく、給料も出るという。

だが、この美味しい話には条件があった。他の場所に泊まってはならないし、客を招き入れてもいけない。そして、アパートメントの他の住民と関わってもならないというものだ。Julesはうっすらと不安を感じるが、切羽詰まった状況なので即座に引き受けてしまう。

The BartholomewはThe Dakotaくらい知名度は高いが、もっとミステリアスだ。このアパートメントを題材にしたベストセラー本を故郷で読んで以来、Julesがずっと憧れを抱いていたアパートメントビルだった。そのアパートメントに住めるだけでなく、好きな本の作者もここの住人だと知ってJulesは興奮する。だが、作者の女性はファンのJulesに対して非常に冷たかった。それでも、Julesは優しいドアマンや、住民のひとりであるハンサムな医師と仲良くなっていく。自分のほかにもアパートメント・シッターがいることを知ったJulesは友だちになろうとするが、その女性が突然姿を消してしまう。同時に不気味なことが起こり始める……。

Riley Sagerは、国際的ミステリ作家の中では「超エリート」ではないが、その次のレベルの売れっ子だ。異様な雰囲気を作り上げるのと「次に何が起こるのか?」とハラハラさせるのがうまく、すべての作品がページターナーだ。

最新作のLock Every Doorもハラハラ、ドキドキのページターナーであることは間違いない。だが、早いうちに何が起こっているのか読めてしまうのが残念だ。ネタバレになるから書けないが、せっかくの謎の真相がリアリティに欠けるのだ。「たぶん、アレが真相だろう」と想像できたので、発想としてはわかる。だが、現実には実行不可能な設定だ。

そういうわけでこの作品に対して良い評価を与えることはできないが、ビーチで軽く読むのには適している。

内容とはまったく別の話だが、私は少し前までこの男性作者が女性だと思いこんでいた。なぜかというと、Rileyはアメリカでは一般的に女性の名前だし、この作家の作品の主人公はこれまですべて女性だったからだ。たぶんそれはわざとなのだろう。というのは、かつて男性作家が支配していたアメリカのミステリジャンル(特に心理スリラー)は、現在では女性作家のお家芸のようになっているからだ。このジャンルの国際的な超売れっ子作家は、ほぼすべて女性だ。女性のほうが売れるジャンルになった現在は、男性作家がわざと女性名を使っている……。それを知ってから読むと、また別の面白さがあるかもしれない。

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