2021年の新年の抱負

どの文化でも、新年はこれまでたまったミスや怠惰などを捨てて「最初からやり直す機会」ととらえられている。そこで、New Year’s Resolutionsとか新年の抱負とかいう表現ができている。

けれども、たいていの人は5日くらい続けて挫折し、挫折したことに挫折して、すっかりやめてしまう。私くらいの年令になるとそのパターンを知っているので、New Year’s Resolutionsはとてもゆるいものにしている。

私の今年のゆるい目標は、
1)自分の心身の健康を最優先する
2)楽しいことを選ぶ。健康を守りつつ楽しめる自信がなかったら、魅力的な仕事でも断る
3)いったんやると決めたら、楽しめるようにする
4)毎日を大切にする

10代、20代の私は、もっと野心的な目標を立てていた。周囲の人から、「そんな馬鹿な夢をみるな」「もっと地に足をつけたことをしろ」といった非難もされた(相談してもいないのに)。それらの目標の良かったところは、一度挫折するとそのまま挫折に繋がりやすい「毎日体重計に乗って体重を減らす」といった「新年の抱負」ではなく、5歳の頃から「やらずにはいられない欲求」を実現するためのものだったからだ。だから、家族や同僚から反対されたり、批判されたりしても英語を学び、イギリスに行き、職場を転々としたのだ。

ゆるい目標をたてている2021年の私は、他人の目を気にせずに野心的な目標を立てていた若かりし頃の私に感謝している。若い私の野心的な目標や努力がなかったら、今の私は存在しなかったからだ。

特に感謝しているのは、若い私が英語の本を読むようになったことだ。5歳の頃から読書好きだったのだが、最初のうちは英語で本を読むとすんなり理解できないから挫折しそうになった。でも、やり続けることで、英語で本を読むのがあたりまえになってしまい、今のように英語ネイティブの夫や夫の母親から「お薦めの本を教えて」と頼まれるようになった。

私が一般の読者とやや異なるのは、いろいろなジャンルを読むことだろう。夫はSFや超文学的な文学が苦手だし、義母はミステリやSFなど少し異なるジャンルはすべて苦手で、回顧録や伝記、歴史小説、女性小説以外は読まない。私は、ホラーやビジネス書はほとんど読まないが、児童書から政治、科学、歴史のノンフィクション、ロマンスから難解な文芸小説まで何でも読む。それらのすべてが、私がこれまで知らなかったこと、自分では体験できなかったことを教えてくれる。

今の私を作ったのは、自分自身の体験だけではなく、大量に読んだ多様なジャンルの英語の本だと実感している。

洋書ファンクラブを通じて読者の皆さんに伝えたいのは「多くのジャンルを読む」ことの素晴らしさだ。シリアスなノンフィクションでないと「勉強」したことにならないと考えている人がかなりいるようだが、ロマンス、女性小説、ハードボイルド、心理スリラーは、自分が知らなかった人々の考え方や、関わり方を教えてくれる。これらのジャンルから学べることは、実はとても多い。でも、大部分は日本語に翻訳されない。

英語で本を読めるようになったら、これらの日本語に翻訳されない大量の本の中から自分で選んで読むことができる。

この「洋書ファンクラブ」の読者のなかには、長年英語圏に住んでいて英語ネイティブと同レベルで英語の本を読んでいる方もいるし、英語の本はあまり読めないけれども海外文学や英語圏のノンフィクションに興味がある方もいるだろう。どの読者も、5歳から現在までのいずれかの私である。

今はまだ読めない人も、日本語のようにスルスル読める未来がきっとやってくるので、すぐに効果がでなくても諦めないでほしい。

英語での読書を「新年の抱負」ではなく、ぜひ「人生の抱負」にしてください。そして、特定のジャンルを馬鹿にせず、知らない国のエスニック料理のように楽しんでください。楽しめる世界が広がることをお約束します。

 

9 thoughts on “2021年の新年の抱負”

  1. いろいろなジャンルを読まれるのですね。私はビジネス書や自己啓発書など、ノンフィクションばかりで、フィクションはあまり読んでいません。読んだらノートにまとめるし、ホームページで記事も書くようになって、読んだことが記憶に残りやすくなりました。今年はジャンル問わず洋書をたくさん読もうと改めて思いました。今年の目標は日本語の本も含めて100冊です。このHPで洋書紹介を読むのをいつも楽しみにしています。

    1. あちらのエスクワイア秋号のスティーブンキングの新作?を訳してます。読書会のように、感想など語り合いたいです。

      1. ツイッターで呼びかけると、同様にキングが好きな人たちが集まってくると思いますから、感想を語り合えると思います。私もよくやっています。それがきっかけで友人グループもできますから、お試しください。

  2. Shigeomi Suzuki

    いつもメルマガを楽しみに拝読しています。
    私も、上記のお方と似て、英語の読書はお堅いノンフィクションやビジネス署や一般向け科学書などが中心でしたが(そのせいかスピードが遅い読み方)、コロナ下のステイホームで Gray Mountain (John Grisham) を読んで、小説は主人公の疑似体験ができて視野が広まるだけでなく、語彙やイディオムも別世界があること再認識しました。言葉だけ聞いていた アパラチア山地の Rust Belt や Hill Billies を肌で感じることができたし、どの頁もビジネス署ではでてこないイディオムてんこ盛りで、これを覚えることも楽しくて初めて小説を二度読みました。今年の抱負は複数のジャンル並行読み、といたします。
    ところで渡辺さんは Kindle で読書されることがおありですか。印刷本は捨てがたい愛着がある一方で、kindle 読書の利点も大きいものがあるので、新しい読書に自らを馴染ませていかねばいけないのか迷っています。クリックで辞書がひけることだけでも圧倒的な利点です。印刷本の存在感と kindle 読書の生産性の間で悩んでいます。お考えをシェアさせていただければありがたいです。

    1. 最近私はGrishamを全然読んでいないのですが、洋書を沢山読み始めたときに「お世話」になった作家のひとりです。読みやすいですし、社会問題になっていることを扱っているし、会話からいろいろ学ぶことができますからいいですよね。対人関係での言い回し(どういう場合にどういう言葉を使うとまずいのか、とか)が自然と学べるところも小説の良いところですね。

      私は初代キンドルのときから20台以上のKindleリーダーを購入し、ブログの初期にはいろいろなEブックリーダーを紹介していました。このブログでKindleをサーチされると過去の記事がかなり出てきますので、初期から現在までにEリーダーをどう追ってきたのかがご覧になれると思います。https://youshofanclub.com/search_gcse/?q=Kindle

      私は紙媒体、Kindle、オーディオブックすべてを活用して毎日読書をしています。料理や掃除、エクササイズ、買い出しの運転中にオーディオブックを使えるのはすごくありがたいです。苦手だった掃除が好きになりました。また、最近のkindle paperwhiteには防水機能がある機種がありますから長風呂読書もできると思います。私はジップロックも使っていますが。でも、紙媒体でないと、という本もあります。オーディオブックと紙媒体の両方を買うこともあります。

      「どの媒体のほうがいい」というよりも、自分の感覚で「どの媒体で読みたいか」と考えるほうがいいかもしれません。

  3. この伸びやかな大きなマインドがゆかりさんのアーティクルの魅力なのですね。改めてゆかりさんの凄さを感じました。

    1. 昔の私だったら数日徹夜してでもやりたかったような仕事を依頼されてお断りするのってすごく辛いのですが、やはり自分の限界を感じるようになっています。
      パンデミックのおかげで、さらに「これからの人生で何をやるべきなのか」を考えるようになりました。
      ゆるゆると、けれども自分が「やってよかった」と思えることをやりたいと思っています。

  4. >今はまだ読めない人も、日本語のようにスルスル読める未来がきっとやってくるので、すぐに効果がでなくても諦めないでほしい。

    そう信じたいです。
    するする読めたらどんなに素晴らしいことか。
    アメリカ在住なのに実用書以外の英語の本を読み始めたのは最近のことです。
    けっこう年もいっているので、くじけそうになるのですが、今年は月1冊読むことを目標にしていきます。

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