無教養でありながら「微生物学の父」と呼ばれる科学者になったアントニ・ファン・レーウェンフックの児童書伝記 All in a Drop

作者:Lori Alexander, Vivien Mildenberger(イラスト)
Publisher ‏ : ‎ Clarion Books
刊行日:August 6, 2019
Hardcover ‏ : ‎ 96 pages
ISBN-10 ‏ : ‎ 1328884201
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1328884206
適正年齢:小学校高学年から中学生(Reading age ‏ : ‎ 8 – 12 years)
読みやすさ:5 (Lexile measure ‏ : ‎ 890L)
ジャンル:児童書(ノンフィクション、歴史)、偉人伝
キーワード、テーマ:偉人伝、Antony van Leeuwenhoek(アントニ・ファン・レーウェンフック)、顕微鏡、微生物、オランダ17世紀
文芸賞:The Robert F. Sibert賞 honor book

1632年にオランダで生まれたAntony van Leeuwenhoek(アントニ・ファン・レーウェンフック)は、自分で作った顕微鏡で世界で初めて微生物を発見し、後に「微生物の父」と呼ばれる偉業を成した。けれども、籠作り職人の家庭に生まれたvan Leeuwenhoekはオランダ語での最低限度の読み書きしか習っていない織物商人だったのだ。

2019年に刊行されてThe Robert F. Sibert賞のhonor bookを受賞した『All in a Drop』は、高等教育を受けていないvan Leeuwenhoekが上質のレンズを作ることに目覚め、そこからミクロの世界に魅了されて自学で微生物を発見した経緯を描く児童書である。文章は小学校高学年に読みやすいように淡々としているが、素敵なイラストで子供を魅了する。この本が指摘しているように、van Leeuwenhoekが科学などの高等教育を受けていなかったのは利点であったかもしれない。それは、「何をどのように考えるのか」を教師によって限定されなかったからだ。ロンドン王立協会会員は最初に彼から書簡を受け取ったときに馬鹿にしていたのだが、王立協会の会員たちが自ら作り出していた想像の限界をvan Leeuwenhoekは持っていなかったわけだ。

裕福な家庭で生まれなくても、高等教育を受けていなくても、好奇心とそれを追い求める情熱さえあれば、恵まれた者たちには達成できないことを達成できるというメッセージを子供に与える良書でもある。オランダ名産のタイルやティーカップなどが出てくるイラストも楽しい。

多読で英語力を身に着けようと試みている大人の読者にもおすすめ。
(今年11月にはペーパーバックが発売されるようなので、それを待ってから購入するのも良いかもしれない)

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