作者:Virginia Feito
Publisher : Liveright
刊行日:August 10, 2021
Hardcover : 304 pages
ISBN-10 : 1631498614
ISBN-13 : 978-1631498619
適正年齢:一般
読みやすさ:7
ジャンル:心理サスペンス、文芸小説
キーワード、テーマ:夫婦、壊れた信頼、疑惑、妄想
マンハッタンのアッパーイーストサイドに住むMrs. Marchは、高名な小説家の夫Georgeを誇りにしていた。その日は、自宅のアパートメントで夫の最新作の出版パーティを行なうことになっており、Mrs. Marchは妻として忙しく準備をしていた。ところが、長年贔屓にしていたパティスリーで彼女が信じていた世界は崩壊した。店主から自分が最新刊の主人公のモデルになっていることを褒められたMrs. Marchは「でも….彼女は…」と言葉を失う。夫の小説の主人公は、常連ですらセックスをしなくなった醜い売春婦なのだ。
それまで安定していたMrs. Marchの世界は突然信頼できないものに変わってしまう。そして、Mrs. Marchの世界には次第に現実と妄想とが混じり合うようになる……。
自分で読んでほしいのでここで詳しくは書かないが、完璧だったMrs. Marchが病的な精神状態に陥っていく過程がスリリングに描かれている。このあたりはとてもパトリシア・ハイスミス的だと思った。語り手が信用できないために読者自身が現実と妄想を推定していくという、怖いのに奇妙に喜劇的な要素もある心理サスペンスだ。そして、文芸小説としても優れている。
刊行の前から女優のエリザベス・モスがプロデューサー兼主演で映像化することが発表されており、注目を集めている。後味が良い小説ではないが、優れた小説であることは確かだ。作者は映画の脚本も書くらしい。