インスタグラム時代の心理問題を露呈する心理スリラー People Like Her

作者:Ellery Lloyd(夫婦チームのペンネーム)
Publisher ‏ : ‎ Harper
刊行日:January 12, 2021
Hardcover ‏ : ‎ 288 pages
ISBN-10 ‏ : ‎ 0062997394
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0062997395
適正年齢:一般
読みやすさ:7
ジャンル:心理スリラー/家族ドラマ
キーワード、テーマ:インスタグラム、インフルエンサー、子育てインフルエンサー、ソーシャルメディア時代の大衆心理、復讐

4歳の娘と生まれたばかりの息子を持つEmmy Jacksonは、ありのままの自分をさらけ出すことで人気を集めたお母さんインスタグラマーだ。@the_mamabareとして何百万人ものフォロワーを持つEmmyはイギリスでお母さんたちに最も影響力を持つインフルエンサーであり、スポンサーから高額の商品を提供されるだけでなく、Mamabare商品も売っている。

「子育てで疲れていて家事も育児もいいかげんなお母さん」というEmmyのイメージは注意深く作られた創作なのだが、フォロワーはそれが「ありのまま」のEmmyだと信じている。夫もそれを「嘘」ではなく、「仕事上のパフォーマンス」として受け入れていた。1作めがヒットしてから何年も2作目が書けないでいる「作家」の夫は、妻の収入に頼るしかない。それも夫婦の力関係に影響を与えていた。

しかし、インスタグラムのインフルエンサーの立場は脆弱だ。ヘイトをぶつけるコメントは数多いし、脅し文句もある。また、少しでも気を緩めた返事をすると、一瞬にしてインフルエンサーとしての生命は終わる。やり手のPRエージェントを雇い、注意深くキャリアを広げてきたEmmyだが、インフルエンサー生命を脅かす大きなミスを犯す。そして、同じ時にある者の復讐のターゲットにもなる……。

ロンドン在住の夫婦のチームが共著した小説で、Ellery Lloydというのはそのペンネームである。妻のCollette LyonsはElleマガジンのコンテンツ・ディレクターをしていたこともあるベテランのライターで、夫のPaul Vlitosは大学で文章創作も教えるプロの作家である。Vlitosは本名で数冊の本を既に出版している。

この小説では妻と夫の別の視点が描かれており、夫婦の協働が活きている。

また、社会問題の分析としても興味深い小説だ。たとえば、それぞれの国のインスタグラムで、人気があるお母さんインフルエンサーが異なるという部分だ。アメリカでは完璧なスタイルの母子の写真を載せているお母さんの人気があるが、イギリスはそうではない。イギリスではある程度不完全なところがある母親のほうが人気があることをEmmyは発見する。これは、以前から私が女性小説の違いで感じていたことと共通していたので、「これだ!」と興奮してしまった。イギリスで人気がある女性小説やロマンスのヒロインは、例えばブリジット・ジョーンズのように間抜けだったり、おっちょこちょいだったりして自立していないことが多い。そこが私には気に入らないのだが、そうでないとイギリスでは女性読者から嫌われるのだ。

もうひとつプロットとは別に怖いと思ったのが、どんなに気をつけていても住んでいる場所とかを探し出す者がいるということだ。この心理スリラーに出てくるストーカーと、彼女が復讐を決めた理由についても、インフルエンサーには予想もできないことであり、それも恐ろしい。

登場人物の誰にも感情移入できない、いわゆる「嫌ミス」の部類だが、それを承知で読むと社会問題や大衆心理の分析として楽しめることだろう。

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