第二次世界大戦時のイギリスの学童疎開をテーマにした心温まる歴史児童小説 A Place to Hang the Moon

作者:Kate Albus
Publisher ‏ : ‎ Margaret Ferguson Books
刊行日:February 2, 2021
Hardcover ‏ : ‎ 320 pages
ISBN-10 ‏ : ‎ 0823447057
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0823447053
対象年齢:小学校高学年から中学生
読みやすさ:6
ジャンル:児童書、歴史小説
キーワード、テーマ:イギリス、第二次世界大戦、学童疎開、家族のあり方

第二次世界大戦勃発時からイギリスはロンドンに住む児童を疎開させる大幅な計画を立てていた。ナチスドイツがポーランドに侵入すると即座にこの計画が実施され、ロンドンに住む学童期の子供たちは地方の見知らぬ家庭で居候として暮らした。この学童疎開は終戦の1945年までの5年続いた。この小説はその学童疎開をテーマにした歴史児童小説である。

12歳のWilliam, 11歳のEdmund, 9歳のAnnaの兄妹は、幼い時に両親を失ってからは祖母と一緒に暮らしていた。愛情のかけらも見せなかった祖母が亡くなっても悲しくはなかったが、問題は保護者を失ったことだ。保護者がいないと両親からの遺産を使うこともできない。そこで弁護士は苦肉の策を立てた。他の子供たちに混じって学童疎開に参加し、そこで良い家族を見つけて保護者になってもらうというものだ。だが、お金のために子供たちを利用する者が必ず現れるので、保護者がいないことや遺産があることは秘密にするように言い渡されていた。

責任感が強い長男のEdmundは兄妹が引き離されないように配慮して礼儀正しく振る舞うのだが、衝動的なEdmundはどこでも問題を起こす。可愛い女の子は引取り手が多いからAnnaを引取りたい家族はすぐに見つかる。でも、かなり大きくなった男子を引取りたい者は少ない。ようやく3人一緒に引き取ってくれる家族に出会ったが、その家の息子たちからしつこく嫌がらせをされる。それでもWilliamとAnnaは我慢していたのだが、Edmundは仕返しをする。仕返しは仕返しを呼び、それが原因で3人は家を追い出されてしまった。その次に行った家ではさらにひどい待遇にあい、3人は心身ともに限界状態になる。兄妹の唯一の救いは、村の図書館の本と優しい図書館司書のMrs. Müllerだった……。

第二次世界大戦中のイギリスの児童疎開は5年も続き、それに参加した子供たちに大きな心理的影響を与えた。それらを伝える小説はこれまでにも出ているが、こうして何度も書き続けられることで次の世代にも歴史を伝える必要があるだろう。

「愛する家族を自分で選ぶ」というメッセージもある心温まるストーリー。

Leave a Reply