作者:Danya Kurafka
Publisher : William Morrow
刊行日:January 25, 2022
Hardcover : 320 pages
ISBN-10 : 0063052733
ISBN-13 : 978-0063052734
適正年齢:一般(PG15+、セックス&バイオレンス)
読みやすさ:7
ジャンル:文芸スリラー、文芸小説、心理スリラー
テーマ、キーワード:連続殺人犯、死刑囚、犯人が人生を変えた女性たち
連続殺人犯の死刑執行の12時間前から、彼のために人生が根こそぎ変わった女性たちの過去の体験をはさみながら死刑執行まで秒読みしていくという珍しいスタイルの文芸スリラー。
3人の若い女性を殺害し、最後に元妻を殺したAnselは、死刑執行の12時間前になっても懺悔をするわけでもなく、持ち前の傲慢さは捨てていなかった。孤独な女性看守を心理操作して脱走を手伝わせる計画も成功した様子で、後はそのタイミングを待つのみだ。いっぽうで、彼は死刑執行にたちあってくれるようリクエストした女性が来るかどうかを不安ながらも待ち望んでいた。
Anselの死刑執行に複雑な気持ちを抱く女性たちがいた。夫からの虐待に耐えられずに幼いAnselと乳児の弟を置き去りにして逃げた若い母親だったLavender、同じ里親制度で暮らした子ども時代にAnselによって心理的トラウマを受けて殺人課の刑事になったSaffy、そして双子の姉がAnselと結婚して殺されたHazelだ。
作者があとがきで書いているように、これらはAnselではなく、女性たちの物語である。彼がもし殺さなかったら、それらの女性がどんな人生を送っていたのかというパラレルワールドでの彼女たちの未来も描かれている。
死刑執行までの秒読みのスリルもあるが、スリラーのジャンルを超える哲学的な問いかけがある。最初のうちは私が苦手なタイプの小説だと思っていたが、最後まで読むと不思議な味わいが出てくる文芸小説だった。