2022年バレンタインデー特集:いまアメリカで人気があるロマンス小説

アメリカで最も良く売れる本のジャンルはロマンス小説である。
バレンタインデーが近づいたので、2022年2月現在アメリカでよく売れているロマンス本をいくつかご紹介する。

●Weather Girl

サブジャンル:現代小説
セックスシーン描写レベル:2.5

雨が多いシアトルのローカルTV局で天気予報キャスター(weather girl)をしている女性主人公は、子どもの頃から憧れの天気予報キャスターの下で働いている。その有名キャスターと局のボスはかつて結婚していたのだが、離婚後の現在も険悪なムードを保っていて、それが職場の雰囲気を悪くしている。そこで、ヒロインはスポーツキャスターのヒーローと一緒に互いのボスのよりを戻らせる工夫をする…。主人公の鬱という重いテーマはあるものの、キュートすぎるほどキュートなロマンスなので、軽く読める。

●The Love Hypothesis

サブジャンル:現代小説、NA
セックスシーン描写レベル:2.5

仕事はできるが学生に厳しすぎて嫌われている教授と、恋愛にあまり縁がない博士号過程の女子学生が、フェイクで恋愛関係を装っているうちに実際に恋に堕ちるという筋書き。よくあるパターンなのだが、理系のナードな環境や人間関係がリアルに描かれているのと、主要人物たちの言動がキュートなことで人気を得ている。こういった、「勉強ができるナードな理系の女子」を恋愛のヒロインとして肯定する作品が最近は静かにブームになっている。

 

●The Spanish Love Deception

サブジャンル:現代小説、NA
セックスシーン描写レベル:3

アメリカの会社で働いているスペイン出身のヒロインは、妹の結婚式で故郷に戻らなければならない。でも、単独で参列したくない大きな理由があった。プレッシャーを与えるおせっかいな家族に「アメリカ人のボーイフレンドと一緒に参列する」と言ってしまったがために困っているところに、同僚の男性がボーイフレンドのふりをして一緒に行くことを提案する。でも、彼はこの会社に加わってからずっと彼女に意地悪をしてきたエネミーなのだ。「敵から恋人に」というロマンス小説で人気のパターンだが、その中でも読者の人気が高く、2021年のGoodreads Choice Awardsのデビュー作部門で受賞した。

●People We Meet on Vacation

サブジャンル:現代小説、NA
セックスシーン描写レベル:3

長年の親友であるPoppyとAlexは1年に1度一緒に旅をしてきた。けれども、2年前のある出来事をきっかけに口もきかない仲になっていた。ずっと幸せを感じられなくなっていたPoppyは、最後に自分がハッピーだったのはAlexと一緒に旅をしたことだったと気づき、また一緒に旅をすることを提案する……。「親友と恋人の微妙な境界線」というのもロマンス小説によくあるパターン。この本は、読者が選ぶ2021年のGoodreads Choice Awardsのロマンス部門で受賞作品になったが、この著者の作品を試すのであれば、前作のBeach Readのほうがおすすめ。

●Reminders of Him

サブジャンル:現代小説、NA(ニューアダルト)
セックスシーン描写レベル:4

発売から2週間以内に紙媒体だけで10万部を売り、すべてのジャンルを含めて全米でNo.1 のベストセラーになった本。その理由はTikTokのインフルエンサーたちだと言われている。作者のColleen Hooverは若い女性に非常に人気があり、発売された本は必ず大ベストセラーになる。その理由は「胸焦がれ、号泣する」ことを約束する筋書きであろう。この本は、ヒロインが飲酒運転で交通事故を起こして恋人が死に、服役中に産んだ娘は恋人の両親がひきとられ、5年の懲役刑を終えてその娘に会いに行くという内容。そして死んだ恋人の親友と恋におちるけれど、もちろん簡単にはいかない。ありえないシチュエーション+ありえないヒーロー+人工的に読者を泣かせる展開、という私にはとても苦手なパターンでざっと読むだけでも苦痛だったのだが、このパターンが好きな人もいると思うのでご紹介する。

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「ロマンス」と「ラブストーリー」がよく混同されるが、ロマンスは、Jane AustenやGeorgette Heyerなどの古典をお手本にしたパターンがあり、「ハッピーエンドが約束されている」というのが重要な定義である。

「ラブストーリー」は「愛とは何か?」といった問いかけのようなものがあり、Romeo and Jullietのような悲恋もある。そして、圧倒的に女性作家が多いロマンス本に比べて男性作家が多い。

この2つに似ていてちょっと異なる「チックリット(chik-lit)」はchick(女の子)のLiterature(文学)を意味するニックネームであり、女性が主人公の大衆小説である。恋愛以外にも家族、仕事、友情などを含めた「女性としての生き方」を描いており、映画化されるヒット作が多い。文芸小説との境界線がはっきりしない作品もかなりあるので、軽く読めるものはこのジャンルに含めている。

ロマンス小説は、英語圏では最もよく売れるジャンルでもあり、年間200冊以上読む読者も少なくはない。読みやすいので、多読で英語の本を読むことに慣れたい人にはおすすめのジャンルだ。

ロマンスにはサブジャンルが多く、人気のトレンドも移り変わる。代表的なサブジャンルに、「歴史(ヒストリカル)」「現代(コンテンポラリー)」「ファンタジー」「パラノーマル」、それらをミックスしたものなどがある。このジャンルを読まない読者からは馬鹿にされがちなジャンルだが、特に「ヒストリカル」と呼ばれる歴史ロマンス小説では驚くほど高学歴の女性作家が多い。大学でシェイクスピアを教えていた学者もいて、「あとがき」で歴史的な考察を解説してくれる。つまり、楽しく読みながら歴史や社会問題を学ぶことができるジャンルでもある。

つい最近までは、ベストセラーになる作品の作者はアングロサクソン系で、主要人物は白人でストレートのカップルだった。ところが、ここ数年でかなり傾向が変わった。以前はアジア系作家がアングロサクソンのペンネームで書くケースもあったが、今では人種マイノリティの作家が、その人の文化背景がわかる名前で、人種マイノリティカップルのロマンスを書くのが当たり前になってきている。そして、それらが大ベストセラーにもなっている。

小規模のサブジャンルだったLGBTQロマンスも最近では一般の読者にも読まれるようになり、次々とベストセラーになっている。日本のBLのように女性作家が書いたゲイロマンスも増えており、ベストセラーになっている。だが、私は個人的にフィクションとはいえ実際のLGBTQコミュニティを描いているものであってほしいと思っている。

ロマンスはセックス描写が多いジャンルでもある。特に近年では露骨な描写が売り物の「エロティカ」が流行り、高校生対象のYAを卒業した年齢(大学生から30歳以下)対象でセックス描写が多い「ニューアダルト(NA)」というサブジャンルも誕生した。それらが好きな読者もいれば、「セックス描写は読みたくない」「ドキドキする感覚だけを読みたい」という読者もいる。そこで、参考にしてもらえるように「セックスシーン描写レベル」を作ってみた。判別が難しいものもあって正確とはいえないレベル表示だが、だいたいの基準ということでご了承いただきたい。

今回もっと幅があるものを選びたかったが、ベストセラーのなかから見つからなかったので、気づいた時に加えていく予定。

ツイッターでも #洋書ロマンス本 で推薦を募集しているので、そちらもご参考にどうぞ。


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