作者:Carter Bays
Publisher : Dutton
刊行日:June 7, 2022
Hardcover : 480 pages
ISBN-10 : 0593186761
ISBN-13 : 978-0593186763
対象年齢:一般(PG15)
読みやすさ:7
ジャンル:現代小説、風刺小説
テーマ、キーワード:デジタル時代のアメリカ人の浅はかさ、デートアプリ、人間関係、人生の意義
2015年のニューヨーク。勉強はできたのに大学卒業後の生き方を決めらない28歳の女性Aliceはソーシャルメディアで「メディカルスクールに行って医師になる!」と宣言して沢山の「イイネ」をもらったが、そのために何の行動も取らずにいる。嫌々ながらリッチな家族の子守をしているが、それも首になる。住む場所も失ってしまったAliceは地下にある安いアパートを見つけるが、市長の下で働いているルームメイトのRoxyは身勝手で勉強の邪魔ばかりする。Aliceの兄Billyはアプリで成功した金持ちだが、次に集中できるものがみつけられず暇を持て余している。Roxyがデートアプリで出会ったBobは誠実そうだが、実は大きな秘密を隠している…。
作者はアメリカで人気があるTVドラマ「How I Met Your Mother」の共同クリエイターであるCarter Bays。そのためか、発売前から話題になっていた作品。宣伝文句からは吹き出してしまうようなコメディを想像するのだが、登場人物たちの浅はかな言動には笑いよりも苛立ちを感じてしまった。登場人物はいずれも実際の人生を生きるよりも、スマートフォンを眺めて生きている。スマートフォンを見ながら歩いていて大怪我をしても、その行動を改めたりはしない。デートの最中でもテキストメッセージを受け取ったらそれに返事をする。やらねばならないことを先延ばしにして遊んでしまう。金持ちのBillyは、道でみかけた被爆親鸞聖人像に感銘を受けて突然仏教を学びはじめ、妊娠した妻を後に残して僧侶になる。笑いのために現代人の浅はかさを大げさに描いているのはわかるが、明日のことを心配せずにこんなに無責任にお気楽に生きていける人たちはフィクションとはいえイラつく。笑うどころか、読んでいてストレスがたまってしまった。ひどい運転の途中で登場人物らが学んだばかりの「南無阿弥陀仏」を唱えるところでは笑ったが。
最終的には「心温まるハッピーエンド」にまとまるのだが、そのあたりもアメリカのテレビ番組的と言えるだろう。私にとっては、さらにスマートフォンとソーシャルメディアを離れたくなる小説であった。