ボストン公共図書館での殺人事件とそのミステリを執筆中の作者が関わる事件が混じり合う「作中作」 The Woman in the Library

作者:Sulari Gentill
Publisher ‏ : ‎ Poisoned Pen Press
刊行日:June 7, 2022
Paperback ‏ : ‎ 288 pages
ISBN-10 ‏ : ‎ 1464215871
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1464215872
対象年齢:一般(PG12、性的なトピックはあるがシーンはない)
読みやすさ:7
ジャンル:ミステリ(作中作)
テーマ、キーワード:作中作、whodunit、ボストン公共図書館

アメリカ最古の公共図書館であるボストン公共図書館で女性の苦痛に満ちた叫び声が響いた。調査にもかかわらず叫び声の正体は不明だったが、翌日女性の死体がみつかった。叫び声が起こった時に同じテーブルに座っていた留学中のオーストラリア人の女性作家、アメリカ人の男性作家、大学院生の男女の4人はこれをきっかけに親しくなる。4人は殺人事件に興味を抱くが、そのうちに危険な出来事が続き、互いに疑いを抱くようになる。

このミステリ小説を書いているのは小説の主人公と同様にオーストラリア人女性だ。Covidのパンデミックのためにボストンに行って現地調査をできないために、彼女のファンを自称するアメリカ人のLeoがベータ読者として原稿にアドバイスを与えている。最初は少々おせっかいだが人畜無害そうなLeoのメールが徐々に不気味になっていく…。

作中作はあまり好みではないのだが、このミステリはそれをうまく利用している。作中作にもLeoという男が出てくるのだが、そのLeoと実際のLeoとの重なり合いと小説への影響がなかなかうまく出来ている。最初の頃に「オーストラリア在住のオーストラリア人作家なのに、なぜボストンを舞台にしたのか?」という疑問を抱いたのだが、後半で「なるほど」とわかってくる。小説の世界ではパンデミックが起こっているのだが、作中作ではパンデミックは起こっていない。そのあたりも興味深い。

面白く読んだのだが、人物造形やプロットはもう少し煮詰めてほしかったところがある。

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