作者:Maggie O’Farrell (Hamnetの作者)
Publisher : Knopf
刊行日:September 6, 2022
Hardcover : 352 pages
ISBN-10 : 059332062X
ISBN-13 : 978-0593320624
対象年齢:一般(PG 15+)
読みやすさ:8
ジャンル:歴史小説
キーワード、テーマ:Lucrezia di Cosimo de Medici(ルクレツィア・ディ・コジモ・デ・メディチ)、モデナおよびフェラーラ公アルフォンソ2世、政略結婚、肖像画
後にトスカーナ大公(grand Duke)になったCosimo I de’ Medici (コジモ1世)の第5子(3女)として生まれたLucrezia di Cosimo de Medici(ルクレツィア)は、結婚前に死んだ姉の代わりにAlfonso II d’Este, Duke of Ferrara(モデナおよびフェラーラ公アルフォンソ2世)と結婚した。儀式は1558年で、Lucreziaは13歳でAlfonsoは24歳だった。実際にLucreziaがAlfonsoの治めるFerraraに行ったのは1560年のことである。だが、翌年1561年にLucreziaは16歳の若さで死亡した。公的には肺炎ということになっているが、夫に毒殺されたという噂があった。Agnolo Bronzinoの有名な肖像画が残っており、それにインスパイアされた詩人のロバート・ブラウニングがMy Last Duchessという詩を書いたことでも知られている。作者が年代と年齢を少し変えているが、この小説はこのLucreziaを主人公にした歴史小説である。
小説は1561年のAlfonsoとLucreziaの2人きりの夕食の場面で始まる。人里離れたかつての要塞に連れてこられた16歳のLucreziaは、夫が自分を殺すつもりだということを確信している。何事もないかのように振る舞う夫に怒りを覚えながらも、運命から逃れられないという無力感も覚えている。
ストーリーは、この1561年と、Lucreziaが誕生する前から結婚に至る過去との2つの時間の流れで進む。読者は、「なぜここに至ったのか?」という疑問と、「これからどうなるのか?」という疑問で読み進めていく。
作者の前作Hamnetも歴史小説だったが、文芸小説らしい難解な部分がかなりあった。本作は、2つのタイムラインはあるものの、流れは一方向なのでストーリーについていきやすい。どちらかというと、一般的な歴史小説に近く、ドラマチックなので演劇を観ているような気分になる。
生粋の文芸小説ファンの中にはがっかりする人もいるかもしれない。けれども、他の読者は歴史小説として存分に楽しめることだろう。