作者:Eliza Jane Brazier
Publisher : Berkley (June 6, 2023)
Hardcover : 416 pages
ISBN-10 : 0593438884
ISBN-13 : 978-0593438886
対象年齢:一般(PG15+)
読みやすさレベル:6
ジャンル:ミステリ、サスペンス
キーワード、テーマ:馬術競技、
裕福な者ばかりが住むカリフォルニア州南部のコミュニティに、テキサスから越してきたParker家が加わった。母親のHeatherはテキサスでの問題から逃れて新しくやり直すためにこの地を選んだのだが、父親のJeffは仕事のために不在がちで、ティーンの娘2人は友人が誰もいない土地での再出発に憤りや不安を抱いていた。
Heatherは、有名な馬術競技のコーチKieran Flynnが経営する乗馬牧場のRancho Santa Fe Equestrianに次女のMapleを入れようとする。Heatherのリクエストを完璧に無視してきたFlynnは、Parker家の裕福さが他のメンバーとは異なるレベルだと知り、Mapleを受け入れた。13歳のMapleは気が弱くて馬が怖いのだけれども、母親に愛されたくて乗馬が好きなふりをしている。実際には姉のPiperのほうが馬術の才能があるのだが、試合中に母親が口出しをしたために失格になったことをきっかけに乗馬をやめてしまったのだった。
長女の時の失敗でも学ばなかったHeatherは、Mapleをエリート騎手にするためにあらゆる場に踏み込んでくる。コーチのFlynnはそれを利用して自分では買えない高価な馬をMapleのために買わせ、さらに利用する方法を策略する。自分の娘を馬術競技で成功させるためにFlynnと牧場に尽くしてきたPamela、牧場のトップ騎手だが、孤児であるためにFlynnの命令に背けないDouglas、意固地になって乗馬を辞めたけれども実際には馬と馬術競技が恋しくてたまらないPiper、Parker家が加わるまではDouglasに次ぐエリート騎手になることを約束されていたようなVidaなどの複雑な心理が絡み合い、ついに誰かが殺される…。
警察の聞き取りを交えながら進む殺人ミステリ/サスペンスなのだが、興味深いのは馬術競技の裏舞台を描いている部分。元々は英国の貴族階級のスポーツとして誕生した馬術競技は、今でも裕福な階層のスポーツといえる。夫の友人(わが家とはレベルが異なるリッチ)の娘がある少女と馬術競技で知りあい、その子が「あなたのお父さん音楽が好きなの?なら、私のお父さんと話が合うかも」と紹介してくれたのがなんとブルース・スプリングスティーンだったという逸話もある。それくらい、エリートレベルになればなるほど、親が非常に裕福だったり、有名だったり、貴族だったりするスポーツのようだ。
この小説に描かれているのは、我が子をエリート騎手にしようとする親たちの戦いや、それを利用するコーチの悪どさである。過剰過ぎて現実離れしているように感じるかもしれないが、わが娘が6歳から14歳までどっぷり浸っていたエリート競泳の世界とよく似ている(娘のかつてのコーチはオリンピックの名コーチだったのだけれど、セクシャルハラスメントが大きな問題になって現在海外逃亡中)ので、どのスポーツでもこういう感じになってしまうのかもしれない、と暗澹とした気分になる。
自分では体験したくないけれど、ちょっとだけ覗きこんでみたい方にオススメしたい殺人ミステリ。