セックスボットとオーナの関係は「愛」なのか? 女性作家の視点が鍵になる今年の話題作 Annie Bot

 

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作者:Sierra Greer
Publisher ‏ : ‎ Mariner Books
刊行日:March 19, 2024
Hardcover ‏ : ‎ 240 pages
ISBN-10 ‏ : ‎ 0063312697
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0063312692
適正年齢:成人(R)/セックスシーン描写レベル:4
ジャンル:文芸小説、SF(スペキュラティブフィクション)、心理スリラー
キーワード、テーマ:セックスボット、AI、愛、所有、自律、関係

Annie(アニー)は、人間のオーナーであるDoug(ダグ)の特別なオーダーで作られた、外見からは人間と見分けがつかない最高級のセックスボットだ。ダグの別れた妻とそっくりに作られていることをアニーは知らない。

アニーを作成した会社のメンテナンス係はダグのことを「良いオーナー」だと言うし、アニーも自分がラッキーだと思っている。けれども、ダグの言動は必ずしも一致しない。彼はアニーのAIが学習するために人間らしい独自の対応をするところが好きだと言うが、彼女が学習して人間らしくなればなるほどダグを怒らせることが増えていく。そしてダグがアニーを家事ボットではなくセックスボットに設定したために家事ができないのに、ダグは1日中家にいるアニーが掃除すらしないと怒りをぶつける。

ダグを満足させるためにしたことが彼を激昂させる「裏切り」とみなされることにアニーが気付いたのは手遅れだった。それに加え、独自の思考を持ち始めた彼女に対してダグは不満をつのらせているようだ。返品されて工場出荷時設定のように記憶をクリアされ、自分としてのアイデンティティを抹殺される恐れを抱いたAnnieは、自律のわずかな可能性を求めて家を出た。しかし、ボットがオーナーから離れるのは容易なことではなかった…。

AI(この場合はセックスボット)と人間の関係は、一見ショッキングだけれどもフィクションではわりと使い古されたテーマである。読者としての私は最初のうちアニーの従順さに苛つくことが多かったのだが、そこはさすがに女性作家が書いただけあって、これまでのものとは展開が異なった。アニーが家を出るあたりで、これはヘンリック・イプセンの戯曲『人形の家』の近未来バージョンだということが見えてきた。

『人形の家』のヒロインであるノラは夫のヘルメルのためにある犯罪を犯し、その秘密を知るヘルメルの旧友のクロクスタから脅される。秘密を知った夫はノラをなじるが、問題が解決したとたんにまたノラに甘い言葉を与えるようになる。ヘルメルはノラを愛していると思っているが、ノラは自分が一人の人間として対等には見られておらず、真の意味で愛されていなかったことに気付いて家を出る。

もちろんまったく同じ筋書きではないが、ノラとアニーがパートナーとの対等な関係を求める権利に気付くのに対して、ヘルメルとダグが最後まで「愛」を勘違いしたままだという部分が共通している。

1879年の『人形の家』の初上演から140年以上が経っている。AIが目覚ましく発達している現在でもこのテーマが古くなっていないのだということに、あらためて考え込んでしまう小説だった。

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