
作者:Amanda Montell (Cultish)
Publisher : Atria/One Signal Publishers
刊行日:April 9, 2024
Hardcover : 272 pages
ISBN-10 : 1668007975
ISBN-13 : 978-1668007976
対象年齢:一般(PG15)
読みやすさレベル:7
ジャンル:エッセイ、社会心理
キーワード、テーマ:アメリカの若い世代の心理的問題、社会問題、magical thinking(呪術的思考)、overthinking
古代から人間にとって最も重要なことは「サバイバル」であり、その結果、外部の脅威から自分を守る短絡的な思考回路ができあがっている。しかし、外部の脅威が減少した現代では、脅威が外部から内部に移行し、それに加えてネットでの情報過多が現代若者の短絡思考のタイプを変えてしまった、というのがこの本の根底にあるテーマだ。
タイトルに含まれている「Magical Overthinking」とは「magical thinking」と「overthinking」とかけ合わせた造語だ。magical thinking(呪術的思考)とは「お祈りをしたから夢がかなった」「儀式をしなかったから災難が起こった」というように、因果関係がないことにに因果関係を見出す考え方である。そして、overthinkingとは深く考える必要がないことを深く考えすぎることだ。
作者のMontellは前作のCultishでカルト集団とそれに惹かれる人々の心理について書いたが、この本ではインターネット世代であるミレニアル世代やZ世代のオンライン文化とそこで起こっているこの世代特有の認知バイアスと「Magigal Overthinking」について自分の体験を加えながら解説している。
何かを調べるためには図書館に行かなければならなかった私たちの世代とは異なり、Montellたち若い世代の人は物心ついた時から情報はネットで簡単に得られるものだった。問題は、普通の人間が整理整頓して理解できる以上の過剰な情報に常に囲まれていることだ。また、かつては専門的な情報はその道の専門家から得るという常識があったが、現在は素人であるソーシャルメディアのインフルエンサーが広める情報のほうが影響力を持っている。人々は常にネットで他人と自分を比べて人生の勝ち組と負け組を決め、それに疲れ果てているのにやめることができない。これらがMontellの言う内部の脅威である。
現代のアメリカの若者は、内部からの脅威からサバイバルするために短絡思考をしている。それに加えて非合理的な考え過ぎもしているのだ。その結果、独自のメンタルヘルス問題を持ち、孤独感も深めているという。
だからどうなのだ…?という点に興味があったのだが、そこはいまひとつ深く語られていなかったのが残念だった。
前作が非常に面白かったので期待していたのだが、この本はあまりにも多くのテーマを取り上げすぎて消化不良になっている感じだった。アメリカの若い世代がソーシャルメディアのインフルエンサーの影響を受けすぎていることは作者が指摘する必要もないほど明らかなので、もっとそれを深めて考察してほしかった。
部分的には「これは興味深い」と思う社会現象や分析があったので、あまり期待せずに読むと楽しめると思う。

