三世代の中国系アメリカ人の視点から描く「白人のアメリカ」の象徴 Real Americans

 

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作者:Rachel Khong
Publisher ‏ : ‎ Knopf
刊行日:April 30, 2024
Hardcover ‏ : ‎ 416 pages
ISBN-10 ‏ : ‎ 0593537254
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0593537251
対象年齢:一般(PG15+)
読みやすさレベル:8(文章そのものは読みやすいが、中心人物と時代が変わった時に混乱する可能性あり)
ジャンル:文芸小説、移民物語
テーマ、キーワード:中国文化大革命、移民、中国系アメリカ人、人種アイデンティティ、富と権力、家族、遺伝、優生学

 

多くの問題が起こって地球が滅亡するという噂すらあったY2K(2000年)を目前にした1999年、中国系移民の両親を持つLily Chenはインターンをしていたメディア会社のパーティで白人男性のMatthewと出会った。大富豪の家系の息子であるMatthewと、お金に困っている移民二世のLilyは不似合いなカップルだったが、それでも恋におちて結婚に至った。しかし、家族の秘密が明らかになったときにその結婚は崩壊した。

2021年。シングルマザーのLilyに育てられたNickは父親が誰なのかを知らない。そのうえ、半分中国人なのに100%白人にしか見えない。過去について何度尋ねても母は答えようとはしない。しびれを切らせたNickは15歳になったときに唯一の親友の策略でDNA検査をし、父親のMatthewを探し当てる。Matthewは再婚しており、Nickより少し年下の息子もいた。Nickが思い切って連絡を取ったところ、驚くことにMatthewはNickのことを知りたいという。貧しい環境で育ち、大学の授業料を案じていたNickは、富豪の家庭で育つ機会と父親を自分から奪った母を恨むようになり、大学に進学してからは母親と距離を置くようになる。そして、父の家族と懇意になっていく…。

それからさらに年月が経ち、老いたLilyの母親Meiは乳児の頃から会っていなかった孫のNickと再会した。それは偶然ではなく、過去を悔いた彼女はNickが住んでいる場所の近くに引っ越しをして遠くから眺めていたのだ。若かりし頃に中国でDNAマッピングの未来を夢見ていた科学者のMeiは、文化大革命で仕事を奪われただけでなく危険な立場に置かれるようになり、香港を経てアメリカに逃れたのだった。生き延びるための選択を続けてきたMeiが犠牲にしたものは多く、そのひとつが娘との関係だった…。

アメリカで生まれ育ち、英語が母国語なのに、アジア系アメリカ人はよく白人から「あなたはどこから来たの?」と尋ねられる。なのに親の母国に行くと(この小説の場合は中国)、中国語が話せないことで差別すら受ける。そういったアイデンティティの問題を持つのがアジア系アメリカ人のジレンマである。この小説は、それに加え、半分はアジア系なのに白人にしか見えないNickの葛藤も描いている。

知り合いで私より少し年上の多くの中国系移民は文化大革命の影響でアメリカに移住している。そのほとんどが学者や高学歴層で、その背景を描いている点でもこの小説はアメリカ人にこれまで知らないことを教えてくれるところがある。アメリカ人なのに「どこから来たの?」と尋ねられるアジア系アメリカ人の苛立ちも。人種問題にからめて優生学のテーマもある。TVのモーニングショーでジェナ・ブッシュの「READ WITH JENNA’S MAY BOOK CLUB」の選書になった理由もそういうところにあるだろう。

私もアジア系アメリカ人なので、そういう視点を紹介してくれる小説は歓迎したい。けれども、この小説そのものがどうかというと、不満な点がかなりあった。

最も不満なのは人物が描ききれていないところだ。Lilyにせよ、Matthewにせよ、Meiにせよ、他人の人生に大きな影響を与える重要な行動を取るのだが、その背景にある心理と理由がしっかりと説明されていないのだ。このために、せっかくの大がかりな小説が少々残念な読み応えになってしまった。

2 thoughts on “三世代の中国系アメリカ人の視点から描く「白人のアメリカ」の象徴 Real Americans

  1. なんか最近マイノリティ作家が書いた本が主流になりつつある気がするんですが、そうなんですか? 実際白人に売れてるんでしょうか? 売れてるから次から次に出てくるんでしょうかね。

    1. Omuraさん、実際によく売れているんですよ。ですから出版社が手掛けるんですよね。これまで才能があっても作品を世に出すことができなかったマイノリティ作家がたくさんいますから、良い変化だと思っています。

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