
作者:Rene Denfeld
Publisher : Harper
刊行日:March 26, 2024
Hardcover : 304 pages
ISBN-10 : 0063014734
ISBN-13 : 978-0063014732
対象年齢:一般(PG12)
読みやすさレベル:7
ジャンル:ミステリ、文芸ミステリ
テーマ、キーワード:愛着障害、holding therapy(愛着療法、ホールディング・セラピー)
2024 これを読まずして年は越せないで賞候補作
妻の希望でオレゴン州の沿岸の町に移住した元警察官のLarryは、その妻を失ってから生きる意味を見つけられずにいた。そこで、町を訪問していた若い女性Amandaが死んだ兄の謎を解き明かそうとしていることを知り、彼女の援助を買って出た。
幼い時に大学教授夫妻から養子として引き取られたAmandaは、なぜか周囲の人々と親しい関係を持つことができずにいた。孤独なAmandaが唯一心を通わせているのが、仕事で世話をしているホッキョクグマだった。最近になって自分には実の兄がいて、4歳の時から収容されていた施設の近くにあるビーチで9歳の時に溺死したことを知ったAmandaは、その地で兄Dennisの短い人生と死について調べようとする。
Dennisが死亡する少し前に就任した施設の所長は、愛着療法の”holding therapy”のセラピストとしての業績を持ち、施設のリフォーマーとしてスタッフからも信頼されていた。だが、Dennisが死亡してまもなく施設は閉鎖し、所長は町を去った。
AmandaとLarryは当時を知る警官から情報を得ようとするが、彼はなぜか口を濁す。そして、Amandaとlarryは命を狙われるようになる…。
この小説で重要なテーマになっているholding therapy(ホールディング・セラピー)とは、20世紀イギリス出身の精神科医ジョン・ボウルビィの「愛着障害」の理論を元にしたもので、アメリカで1970年に生み出されたAttachment therapy(愛着療法)である。対象は特に養子として引き取られた子どもで、養父母に懐かない、あるいは問題行動を起こす場合に「愛着障害」があるとみなされた。そういった子どもを毛布や絨毯にくるんで「誕生」を再体験させることで愛着障害が治癒するという信念に基づいた療法がholding therapyだ。この療法によって死亡した子どもの例が1990年代からしばしば報告されるようになったにもかかわらず、現在でもこの療法は行われている。
胸が痛むミステリだが、最終的に人間の善も信じさせてくれるところが作者Rene Denfeldの力量である。

