
作者:Amity Gaige
Publisher : Simon & Schuster
刊行日 : April 1, 2025
Print length : 320 pages
ISBN-10 : 1668063603
ISBN-13 : 978-1668063606
対象年齢:一般(PG12)
読みやすさレベル:7
ジャンル:文芸スリラー
キーワード、テーマ:アパラチアン・トレイル、ハイカー、メイン州の深い森、自然と人間のかかわり
アメリカ東部をジョージア州からメイン州までアパラチアン山脈に沿って南北に縦貫するアパラチアン・トレイル(略称A.T)は全長約3500kmの長距離のトレイルであり、北上コースの最終部は特にタフで危険な環境になることで知られている。
トレイルの最終地点を目前にしたメイン州のトレイルで42歳の女性ハイカーValerieが行方不明になった。メイン州のトレイルは少しでもトレイルを離れると方向感覚を失って迷うような大自然の森林に囲まれている。その困難な環境で長年行方不明者の捜索をしてきた女性自然保護管理官(State Game Warden)のBeverlyは、男性中心の職場環境のなかで最も尊敬される成功経験を積み上げてきた。Valerieも必ず探し出す決意をしていたが、通常の方法はすべて失敗に終わった。脱水と飢餓と戦わねばならぬハイカーが生存できる日数は限られている。Beverlyは絶望感を覚えながらも諦めようとはしなかった。
コネチカット州の高齢者施設に入居している76歳のLenaは現実世界での友人はいないが、バードウォッチングの趣味を通じてネットで唯一の友人を作った。メイン州に住むその若い友人から女性ハイカーが行方不明になったことを知り、最初は疎遠になっている娘ではないかと思う。娘ではないことがわかった後でも女性ハイカーのことが気になってならないLenaは、アマチュア探偵のようにValerie失踪の謎を突き止めようとする…。
アメリカでのハイキングのメッカであるアパラチアン・トレイルに関しては、以前にもノンフィクションのGrandma Gatewood’s Walkをご紹介したことがある。私の夫は昨年アパラチアン・トレイルと一部オーバーラップし、ATよりも古いロングトレイルに挑戦して完歩したので、私もValerieの伴侶のように食品の調達などのサポート役を努めた。そういったこともあって、この小説でのトレイルハイキングのカルチャーや自然の描写はとてもリアルに感じた。
行方不明者の捜索というサスペンス/スリラーだけを求める読者にはスローな展開に感じるかもしれないが、どういう人たちがこの厳しい自然環境の中を歩こうとするのか、またどういう人たちが行方不明者を探そうとするのか、その肌感覚を体験したい読者にとっては素晴らしい文芸スリラーである。

