
作者:Bruce Holsinger
Publisher : Spiegel & Grau
Publication date : July 8, 2025
Print length : 380 pages
ISBN-10 : 1954118961
ISBN-13 : 978-1954118966
対象年齢:一般(PG 15+)
読みやすさレベル:7
ジャンル:現代小説、ドメスティック・スリラー
テーマ、キーワード:AI、自動運転車(self-driving car, autonomous vehicle)、交通事故の責任、トロッコ問題、特権階級、デジタル依存症、倫理観、AIコンパニオン、家族関係
Cassidy-Shaws一家はテスラよりも優れたAIを使った自動運転のミニバンで長男のCharlieのラクロスの試合に向かっていた。高校のスター選手であるCharlieはラクロスで有名な大学からスカウトされ奨学金も得ており、高校生として最後の試合を家族全員で観戦することになっていた。運転席にいたのはCharlieでその隣の助手席に座っていたのは父のNoahだった。Noahは弁護士だったが、AIの専門家として世界的に有名な妻のLoreleiや成功者だらけの彼女の家族に対して常に劣等感を抱いていた。NoahとLoreleiは2人とも車の中で仕事に没頭しており、小学校高学年と中学生の娘IzzyとAliceは後部席でスマホを使ってそれぞれの世界に入り浸っていた。
突然真ん中の子供AliceがCharlieに注意を呼びかけた直後に正面衝突の事故が起こり、家族は全員が奇跡的に生き残ったものの対向車に乗っていた2人は死亡した。
Noahは最初のうち負傷した息子のラクロス選手としての将来を心配していただけだが、事故寸前にCharlieがスマホで誰かとメッセージをやり取りしていて道路を見ていなかったことを知り不安にかられる。運転を怠っていたことがわかれば、vehicular homicide(危険運転致死罪、過失運転致死)で有罪になり、懲役刑を受ける可能性がある。大学進学どころの話ではない。担当の女性刑事はすでにCharlieを起訴するための証拠を集めている様子だ。
家族それぞれの怪我や心理的ストレスから逃れるために、家族は喧騒を離れてChesapeake Bayの水辺の貸別荘でバケーションをすることにした。
静かな場所で家族の絆を強めるつもりだったのに、隣にある豪華な別荘では大きなパーティが行われていて落ち着くことができない。なんとその別荘の持ち主はテックビジネスの大富豪Daniel Monetだった。Monetの一人娘とCharlieは即座に惹かれ合うが、Noahは身分違いの恋を案じる。それだけでなく、どうやらLoreleiとDanielはかなり親しい間柄らしい。Noahは妻に相談せずにCharlieのために弁護士を雇ったことを後悔していたが、Loreleiが自分に隠している秘密はもっと大きなもののようだ。Aliceも家族に伝えていない秘密がある。そして家族の間の亀裂はどんどん深まる…。
AIが運転している自動運転車がミスをしたときの運転手の責任はどうなるのか? 未成年者が自動運転車を運転している時、助手席に座っている大人の監督責任はどうなるのか? AIを教育する時のトロッコ問題(ある人を助けるために他人を犠牲にするのは許されるのか?)はどうなのか? 人間はどこまでAIに頼れるか? AIをどう教育するべきなのか? 金とコネを使って責任から逃れることができる特権階級の人物の命はそうではない者の命よりも重いのか? 親は子供にどこまで責任を教えるべきなのか? …など多くの倫理問題がつまった非常に現代的な小説である。
読者が登場人物たちに感情移入できるとは思えないが、AI時代に生きる現代人の倫理観の曖昧さについて興味深く読めるだろう。

