
作者:Rabih Alameddine
Publisher : Grove Press
Publication date : September 2, 2025
Print length : 336 pages
ISBN-10 : 0802166474
ISBN-13 : 978-0802166470
対象年齢:一般(R、性的コンテンツあり)
読みやすさレベル:8
ジャンル:文芸小説
テーマ、キーワード:レバノン、ベイルート、内戦、母と息子の関係、同性愛
文芸賞:全米図書賞受賞作、これを読まずして年は越せないで賞大賞受賞作
60代の独身男性Rajaは、ベイルートの高校で哲学を教え、小さなアパートで年老いた母と一緒に暮らしている。母は昔から長男である兄のほうを溺愛しており、Rajaの反対に耳を貸そうとせず、兄が国外に逃げるために家と家具を売却して得たすべての財産を与えた。その挙げ句に異国で長男夫婦に家政婦扱いされた母は、その境遇に耐えられなくなって次男のRajaのアパートに転がり込んだのだった。
けれども母親はRajaに感謝するどころか、事あるごとに彼をけなす。Rajaのほうも負けずに言い返すのだが、喧嘩をしながらも、レバノンの内戦、銀行崩壊、Covid-19のパンデミックといった困難を2人はタフに乗り越えていく。
Rajaの語り口は軽快だけれども、内戦の時に兵士に拘束されて殺害される危機に直面したことがある。生き延びるためにRajaは兵士にダンスを教え、彼の心を掴む。そのうちにストックホルム症候群のような性的関係を持つようになるが、最終的にその兵士から見捨てられる。Rajaはなんとか生き残ったもののこの裏切りは忘れることができない。
ふだんはRajaをこきおろす母だが、彼が誘拐された時には息子を救うために奔走し、重要なことが起きるたびに底力を発揮する。そして、反政府のプロテストで活躍して若者から尊敬されたりもする。
暗くなりそうなテーマを扱いながらも、Rajaと母の人生は小さな楽しみや喜び、ユーモアに満ちている。生徒のことも教師としての自分も軽くけなしているけれども、実際には生徒を愛しているし、生徒から尊敬されていることもわかってくる。
彼らの小さくも素晴らしい暮らしに招き入れてくれる巧みな文章であり、楽しみながら読むことができる。
こういった作品が全米図書賞を受賞したことが嬉しい。

