
作者:John Green
Publisher : Crash Course Books
Publication date : March 18, 2025
Print length : 208 pages
ISBN-10 : 0525556575
ISBN-13 : 978-0525556572
対象年齢:一般(PG、特に若者に読んでいただきたい)
読みやすさレベル:6(読みやすくて理解しやすい)
ジャンル:ノンフィクション
テーマ、キーワード:結核、歴史、医療、エッセイ、回想録
文芸賞:Goodreads読者賞、2025年これを読まずして年は越せないで賞ノンフィクション部門賞
John Greenは、2012年に洋書ファンクラブが「これを読まずして年は越せないで賞」の大賞に選んだYA小説 The Fault in our Starsの作者である。この小説を紹介した時にも書いたが、彼は弟のHankと一緒にVlogbrothersというYouTubeのチャンネルを運営していて、ここで2007年からずっと若者たちに歴史や政治を解説してきた。
2025年に刊行されたEverything TuberculosisはJohn Green にとって2冊目のノンフィクションで、タイトルにあるように「結核」についての本である。
Greenはあるきっかけで結核についてのめり込むようになり、結核のことを「人間の愚かさ、卓越さ、残酷さ、そして思いやりを映し出す窓」として捉えるようになった。そんな彼のことを妻は(あなたの頭の中では)「全てが結核についてであり、結核がすべてを語っている」とよく冗談を言うようになった。タイトルはそこから来ている。
結核は過去の病気のように思われがちだが、実際には毎年現在で世界の死因のトップ10に入っている。特に低所得者が多い国では結核による死亡数が多く、アメリカ合衆国はこれまで早期発見と治療のための資金を提供してきた。ところがトランプ政権が対外援助を削減したためにそれらの援助も打ち切りになってしまった。打ち切りにより、世界中で結核が30%増加することが予測されている。こういったタイミングでのJohn Greenの本は、非常に有意義なものである。
本書でGreenは結核が世界各地で歴史的に文学的にどう扱われてきたのか、結核医療の進歩はどうだったのかをわかりやすく説明してくれるのでそこも素晴らしいのだが、読者を引き込んでくれるのは、シエラレオネでGreenが出会ったHenry Reiderという青年の逸話だ。Greenが初めてHenryに出会った時、彼は17歳だったのだが栄養が足りない彼は小さな子どもにしか見えなかった。最初のうちスタンダードな治療を受けていたHenryはそのままだったら治っていたはずだったのに、医療不信の父親が治療の途中でやめさせて手元に連れ戻したために薬剤耐性になってしまった。そのHenryが何度も希望と絶望との間を行き来するたびに読者は彼の回復を祈らずにはいられなくなる。彼のストーリーがあるからこそ、多くの読者は結核とその治療法に興味を抱いたのではないだろうか。
医療に対する不信感は、アメリカだけでなく多くの国で広まっており、予防接種に反対する者も増えている。アメリカではしかは2000年に根絶宣言されたのに、近年「ワクチンは安全ではない」というアンチ・ワクチンのプロパガンダで接種率が低下し、集団免疫が低下して大規模な流行が起こるようになっている。
こういった状況だからこそ、この本を多くの人に読んでもらいたいと思った。

