アメリカの若者の間で人気のリアル「脱出ゲーム」。それをテーマにしたYAスリラーの数々。 The Escape Game

最近気づいたのは、アメリカでEscape room (あるいはEscape game)をテーマにしたYAスリラーが増えていることだ。新刊の筈なのに「これ、読んだことがある」と思うほど似た雰囲気の本が多い。Escape Roomとは、閉じ込められた密室でパズルや謎を解いて時間内に脱出するという、体験版のリアル「脱出ゲーム」のことだ。アメリカでは40代以下の若い層で人気があり、現在3000ほどの施設が営業しているとのことだ。

この「脱出ゲーム」は以前から流行っていたインターネットでの脱出ゲームのリアル版であり、流行のきっかけは2007年に京都で行われた最初のリアルイベントだという。アメリカで広まった理由のひとつは、大企業がチームの結束を強めるための「チームビルディング」のイベントとして利用していることだが、もうひとつ興味深い現象がある。

アメリカの特にミレニアル世代(1981-96)の間では実際にリアルの世界で友人たちと触れ合うボードゲームや体験型ゲームの人気が高まっている。私の娘もこの世代に属すのだが、既婚で子供がいてもボードゲームや体験型のゲームイベントを昔からの友人たちと楽しむことは続けている。このあたりが私たちブーマー世代の若かりし頃とは異なるのだが、こういった風潮もEscape roomの人気に貢献しているのかもしれない。

2020年くらいからEscape roomをテーマにしたスリラーやホラーは存在しているのだが、全部をご紹介するのは無理なので、今回は2026年に刊行された新刊の中から2作をご紹介する。

 

 1. Six Must Die

 

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作者:Victoria Wlosok
Publisher ‏ : ‎ Little, Brown Books for Young Readers
Publication date ‏ : ‎ March 10, 2026
Print length ‏ : ‎ 352 pages
ISBN-10 ‏ : ‎ 0316510378
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0316510370
対象年令:高校生、YA(PG15)
読みやすさレベル:6
ジャンル:YAスリラー
キーワード:Escape room(脱出ゲーム)、殺人、報復、信頼できない語り手

高校の仲良し7人組は、グループのひとりの両親が所有する密室の脱出ゲーム(Escape room)に集合して新しい挑戦をするのが慣わしだった。だが、ある日、脱出ゲームの途中で火災が発生し、逃げ遅れた1人が焼死した。7人のうち5人は小さな町で一緒に育った仲であり、何人かの親は地元の有力者だった。死亡したのは他の州から少し前に移住してきた一卵性双生児のひとりMattであり、シングルマザーである母親はEscape Roomのオーナーを訴訟した。この事件以降、生き残った6人が集まることはなかった。

Steffiは火事での脳損傷で当日の記憶をほぼ失い、故郷を離れていたのだが、事件から1年後に「脱出ゲーム」の招待状を受け取り、自分が失った記憶と取り戻すために昔の友人たちとゲームに挑戦することを決意した。

集まった友人たちはそれぞれにゲームに参加する理由と秘密があるようだった。そして、脱出ゲームはホラーに変わっていく…。

このYAスリラーの問題は、「脱出ゲーム」にまたも挑戦する理由や、殺人と報復の理由が納得できるレベルのものではないことだ。ただ単にホラーやスプラッターにするために理由をこじつけた感じであり、そのために私の評価は低くなった。密室ゲームでの閉塞感や恐怖を娯楽として楽しみたい読者には読みやすい英語の小説として良いかもしれない。

2. The Escape Game

 

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作者:Marissa Mayer, Tamara Moss
ASIN ‏ : ‎ B0FCXKKXRR
Publisher ‏ : ‎ G.P. Putnam’s Sons Books for Young Readers
Publication date ‏ : ‎ April 7, 2026
Print length ‏ : ‎ 416 pages
ISBN-13 ‏ : ‎ 979-8217006120
対象年令:高校生、YA(PG12+)
読みやすさレベル:6
ジャンル:YAスリラー
キーワード:Escape room(脱出ゲーム)、リアリティTV番組、パズル、殺人

「脱出ゲーム」をテーマにしたリアリティTV番組『The Escape Game』シーズン4の撮影現場で参加者のティーンAliciaが殺害されたのは半年前のことだった。この殺人事件が未解決のままだというのに、当時容疑者扱いされていた被害者の妹Sierraが出演者のひとりとして選ばれ、シーズン5がスタートした。

Sierraのチームメイト3人は最初のうち彼女を疑っていたが、Sierraが強調するように別の殺人犯人がいるということを信じ始める。他のチームに負けて脱落しないよう努力しつつ真相を見極めようとするが、また新たな事件が起きる…。

 

上記で紹介したSix Must Dieよりも登場人物それぞれの個性がきちんと作られていて、好感も抱ける。それはたぶんベテラン作家2人の共著だからだろう。また、上記よりも「脱出ゲーム」に使われるゲームの内容が出てくるし、殺人事件謎解きではゲームに必要なチームワークが使われている。スプラッターやホラーの要素はないので、そういうタイプが苦手な人にもこちらをお薦めしたい。

 

 

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