わかる人にはわかるエンディングが絶妙のゴシックミステリー—The Little Stranger

Sarah Waters
480 ページ(ハードカバー)
Riverhead Hardcover; First Edition edition
2009年4月30日発売
ゴシックミステリー/ホラー(やや)/文芸小説/2009年ブッカー賞候補作

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二度の世界大戦を経て英国の階級社会は崩壊し、社会民主主義国家に急変しつつあった。


独身の中年医師Faradayは、10歳のときにメイドの母に連れられて大地主Ayres家の屋敷Hundreds Hallを訪れたことがある。それから30年後、住み込みのメイドを診るために屋敷に往診したFaradayは、家庭医として家族を訪問するようになる。

過去には豪華な建築物だったHundreds Hallは激しく老朽化していた。それだけでなく、メイドのBettyが最初の往診で訴えたように、まるで邪悪な存在が家を破壊しようとしているようなのだ。未亡人のAyres夫人、娘のCaroline、息子のRoderickたちはFaradayに頼るようになるが、彼は医師らしく幽霊説を頭から否定して解決策を提供する。だが、幽霊に怯えるAyres一家の異常な言動をストレスによる精神的な病と診断するFaraday自身も、しだいにHundreds Hallの邪悪な気配を感じるようになる。

Hundreds Hallに取り憑き住人たちを襲うThe Little Strangerとは、姉弟が生まれる前に死んだ長女の幽霊なのか、それとも家そのものの霊なのか、またはまったく 異なる存在なのか……。

The Little Strangerの正体が途中から見えてくる人には最後まで読まなくてもわかるし、見えない人には最後まで読んでもわからない。そんなエンディングがかえって粋なゴシックミステリーだ。

●ここが魅力!

今年のThe Man Booker Prizeの候補作の中では、Hilary MantelのWolf Hall
とSarah WatersのThe Little Strangerの2作が本命視されています。オンラインカジノではWolf Hallが本命ですが、 ダントツ売れているのはThe Little Strangerです。
Wolf Hallをまだ読んでいないので比較はできませんが、The Little Strangerはなかなかの読み応えでした。

英国の古いお屋敷で超常現象が次々と起こるという筋書きは使い古された感があります。けれどもSarah Watersは、まるで古い時代に書かれた作品のように押さえた筆使いで朽ちてゆく屋敷の雰囲気と社会の急速な変化に戸惑う人々の葛藤を巧みに描いており、古くて新しい微妙な世界を作り上げています。邪悪な存在であるThe Little Strangerのやり口が変貌してくるにつれて怖さもじわじわと増してきます。

超常現象を扱ったゴシックロマンですが、チープなゴシックロマンと異なるのは、魅力的な登場人物や胸躍るロマンスの故意ともいえる不在です。孤独で実直な医師Faradayの、憐憫、嫌悪、欺瞞、羨望を覆い隠した語り口は巧妙で、人間の深層心理を描いた心理ミステリー/文芸小説としても楽しめます。

エンディングについてここではばらせないbleahので、ディスカッションしたいかたは、ぜひメールをくださいね。

●読みやすさ ★★☆☆☆

オールドファッションな雰囲気の本ですが、文章は古めかしくなく、さほど難しい単語や言い回しは使っていません。そういう意味ではスラングが多い現代の本よりも読みやすいでしょう。

ただし、プロットを追う類いのではなく、心理的なサスペンスや雰囲気を楽しむ本です。これまでにある程度の本を読みこなしていないと、この本の良さを感じるのは難しいでしょうし、エンディングが理解できないと思います。ネイティブの読者でも読みのがす人がけっこういるようですから。そういう意味で★2つです。

●アダルト度 ★☆☆☆☆

ラブシーン的な箇所は1カ所のみでそれも非常にマイルドなシチュエーションです。

●「英国の古いお屋敷に潜む謎」に弱い方へのおすすめ作品

The Thirteenth tales

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The Forgotten Garden

The House at Riverton

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