ちょっぴりロマンチックでディテールが面白い歴史ミステリー The Devlin Diary

448ページ(ハードカバー)
Pocket
2009/5/12
歴史小説/ミステリー

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TrinityCambridge アメリカ人歴史学者のClare Donovanと英国ケンブリッジ大学の研究員Andrew Kentが主人公のThe Rossetti Letterの続編。続編だが、前編を読んでいなくても単独の歴史小説として読むことができる。

Clareは、The Rossetti Letterで17世紀のベネチアの謎を一緒に解いたAndrewの計らいでケンブリッジ大学のトリニティカレッジで臨時講師を務めることになった。Andrewとの仲が発展することを期待していたClareだが、大学に到着してみるとAndrewから徹底的に無視され、恋敵の親友からは研究が不可能になるほどの雑務を与えられる。アメリカ人として英国人の同僚から冷たくされているClareにハンサムなDerek Goodman教授が優しくしてくるが、それはClareがWren Libraryでみつけて研究のテーマにしようとした古い日記と研究を盗むためだった。

Kéroualle Clareが図書館で見つけたDiaryは暗号のような速記で書かれた17世紀の女性医師Hannah Devlinの日記だった。当時は女性が医療をすることが禁じられていたが、王宮に使える名医の父から直接医学を学んだHannahは、非科学的な医療を施す英国の医師たちよりも優れた技術を持っていた。貴族ではなく貧しい者の治療に生き甲斐を見いだしていた未亡人のHannahは、国王チャールズ2世の閣僚のひとりで亡き父の過去の知人であるアーリントン伯爵から国王の愛人Mademoiselle de Keroualle(写真左)の病の治療をするよう強要される。投獄を逃れるために治療を引き受けたHannahは、しだいに王宮に使える者の連続殺人と父親の死に関係があることを悟り、真相を突きとめようとする。



●感想

先日ご紹介したOxfWren Library, Trinity Smallordが舞台のHeresyのように、詳細を読むのが楽しい歴史ミステリーです。舞台になっている現代のケンブリッジ大学のトリニティカレッジとWren Library(写真右)は、去年11月に訪問したばかりなので、まるでそこにいるような気分を味わえました。そういえば、本書にも「日本人観光客」ってのがちらりと出てきますが、私のことかも(笑)。

現代のケンブリッジ大学での殺人事件と17世紀ロンドンの王宮を舞台にした連続殺人事件がパラレルで進行していくのは前作のThe Rossetti Letterと同様ですが、17世紀のストーリーのほうが面白いので現代の部分はなくても良かったような気もします。17世紀の部分のHannahとEdward、友人の科学者Ravenscroft は架空の人物ですが、Charles Ⅱ、Henriette-Anne, Lord Arlington, Sir Thomas Clifford, Ralph Montaguなどは実在の人物です。(悪名たかき陰謀の”CABAL”の元になった官僚のうち2人、AのアーリントンとCのクリフォードが登場します)ついでに言えば、The Devlin Diaryの欠陥は、堅い歴史小説でもなく、歴史ロマンスでもない中途半端さでしょうか。その中途半端さのために読者層が広がる可能性はありますが。

フェミニズムが根底にあるために、男性読者はうんざりするところがあるかもしれません。けれども、歴史の詳細は男女とも楽しめると思います。

●読みやすさ ★★☆☆☆

文章そのものは難しくありませんが、歴史が好きでないとディテールに退屈するかもしれません。そのかわり、英国の歴史物が好きで沢山読んでいる人にとっては読みやすい本でしょう。

●アダルト度 ★★★☆☆

ずっとおっとりしていたのに、突然ホットなシーンが現れてびっくりしていたらそれっきりでまたおっとりに戻ります。そのシーンだけなんか場違いに感じましたが、もしかしたら出版社から「歴史ロマンスファンが多いからホットなシーン入れろ」とか指導されたのかもしれません。

●この作品の前作

The Rossetti Letter

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アスペルガーの小学生が主人公で大人も楽しめるミステリー The London Eye Mystery

Siobhan Dowd
336ページ(ペーパーバック)
Yearling; Reprint
2008年2月初版
児童書(9−12才)/ミステリー/自閉症・アスペルガー

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(kindle版あり)

小学生のTedは、ある症候群(病名が出てこないが、彼の言動から高機能自閉症のアスペルガー症候群であることが想像できる)にかかっているために家族や同級生の感情が読めず、状況に合わない行動をとってしまいがちである。頭脳派のTedとは逆に姉のKatは熟慮せずに行動する感情の起伏が激しいタイプで、喧嘩は絶えない。ロンドンで暮らしているTedたちのところに、母親の妹Aunt Gloriaとその息子のSalimがやってきた。Salimの父親と離婚しているAunt Gloriaは息子と共にニューヨーク市に引っ越しすることに決め、その途中で姉を訪問することにしたのだ。

London Eye TedとKatは、母、叔母、従兄と一緒にロンドン名物の巨大な観覧車London Eye(右の写真)に乗ることになった。長蛇の列にうんざりした母親たちは、子供たちにチケットを買わせ、自分たちはコーヒーを飲んで待つことにする。Tedたちが列に並んでいるとき、見知らぬ男性が「チケットを買ったけれど閉所恐怖症だから乗るのをやめた。無駄にしたくないから」とただのチケットを1枚渡してくれた。チケットを買う列が長過ぎるので、TedとKatは自分たちが乗るのを諦め、客のSalimにそのチケットを譲ることにする。Salimは2人に手を振ってカプセル(下の写真)に乗り込むが、カプセルが到着すると、そこにはSalimの姿はなかった。

London Eyeカプセル

行方不明になったSalimは何日もみつからず、警察やテレビ局を巻き込んだ大騒ぎになる。他人とは脳の働きが異なるTedは論理的な仮定を立てるが、誰も聞く耳を持たず邪魔者扱いにされる。Tedの意見に耳を傾けたのは、不思議なことに普段彼を無視するKatだけだった。大人たちが感情的になって騒いでいる間に、TedとKatは自分たちでSalimを探そうと試みる。

アスペルガー症候群(らしき)Tedの一人称で描かれたこのミステリーは、この症候群の子供の思考回路をよく描いており、プロットも児童書とは思えないほどしっかりしている。学校での人種差別、両親が離婚した子供の立場など、考えさせられるテーマが多く含まれているが、深刻にならずにユーモアたっぷりに描かれている。

●ここが魅力

洋書ファンクラブ ジュニアの読書プログラム参加者のために良いミステリーを探していて見つけたのがこの作品です。昨年末にロンドンに行ったときにLondon Eyeに乗ったので、まずタイトルと表紙の写真に惹かれ、そして主人公のTedがアスペルガー症候群らしいことにも興味を持ちました。

Emo face アスペルガー症候群の典型的な特徴のひとつは、表情が読めないことです。そこで、カウンセリングでは表情の絵(たとえば右の写真のような)から他人の感情を学ぶレッスンをします。「唇の端が上を向いていたら笑っているということで、笑っているということは良い感情を抱いていること」といったTedの解説はそういうレッスンから来ているのです。この症候群のたいていの子は目を合わせませんし、身体を触られることや怒鳴り声も嫌いです。

米国人の甥の一人がそうなので、私にはTedと周囲の大人の関係が容易に想像できます。 他人からは異常に見えるTedの言動を彼の視点で追うと彼のほうが絶対に論理的なのですが、大人たちは聞く前から下らないことと決めつけて「黙りなさい」と叱ります。甥と彼の父親の関係がまさにそんな感じです。でも、いったんTedの思考回路を理解すれば、この状況の理不尽さに、きっと吹き出したり、立腹したりしてしまうでしょう。

アスペルガーならではのユーモアがたっぷりで、「嘘をつけない」性格のTedが調査のために嘘をつくことを覚え、それを誇りにして「My Lies」というホルダーを作り "It's got a lot of growing to do"と決意を新たにするところなんかは、つい笑ってしまいます。

みんなから変人で邪魔者扱いされているTedが、その頭脳を発揮して事件を解決するこの児童書ミステリーは、ロンドン下町の家族関係や人物描写が優れていて、大人も楽しめるミステリーです。

●読みやすさ ★★★★☆

簡単で読みやすい文章です。英国特有の表現はありますが、わからない単語があっても前後関係でほぼ理解できると思います。Tedが気象オタクなので気象に関する単語がよく出てきます。

児童書の読みやすさについては、洋書ファンクラブ ジュニアのほうでさらに詳しく分類するようにしています。そちらをぜひご参照ください。この本は、小学校4年生か6年生、中学生向けのカテゴリーに貼ります。

●アダルト度 ★☆☆☆☆

親が子供に「これどういう意味?」と尋ねられてちょっと困るかもしれないな、と思う場所が2カ所ほどありましたが、それ以外は9才くらいから読んでも大丈夫な内容です。困る箇所というのは、離婚している叔父と叔母がキスしてるのではないかと主人公のTedが想像して気分を悪くしているところ(アスペルガーらしき彼にとっては人と人が触れるのを想像するだけでも気持ち悪いらしい)と、Tedの姉Katが、「子供がさらわれる理由はお金だけではない、セックスのためだ」と弟に話すところです。それ以上話題は発展しませんが、気になる親ごさんはいらっしゃるかもしれませんね。私なら娘がこの年齢以下でも読ませ、質問されたら「いろんな意味で変な人がいるから気をつけないとね」と軽く説明したと思いますが、親ごさんによってはそういうシチュエーションを避けたい方がいるかもしれません。
また、低学年のお子さんには病名が出てこないTedの症候群についての説明が必要だと思います。

●これとよく似た傑作です。どちらもおすすめ。
The Curious
Incident of the Dog in the Night-time

元ボストン・ポップスの変わり者演奏家が書いた「応用馬鹿学の法則」Principles of Applied Stupidity

Justin Locke
204 pages(ソフトカバー)
Justin Locke Productions
2008年初版、2010年第三版
ユーモア/エッセイ/セルフヘルプ

Poascover228small

購入は直接Lockeのサイトからどうぞ

 

今日ランチを一緒にした元ボストンポップスのコントラバス奏者Justin Lockeがこの「 Principles of Applied Stupidity 」の著者です。

Principles of Applied Stupidity(応用馬鹿学の法則)は、簡単に説明すると、「成功し、幸福になるためには、賢くなくてはならない」という私たちの思い込みを覆すユーモア本です。
「なるほどそのとおり!」と思わせる名法則は沢山あるのですが、その中で私がにやりと笑ったのは無知であることの強みについての部分です。あるビデオ・プロデューサーはフィルムプロダクションの学校に行ったことがなく、自分がいかに無知かを知らないstupidさでした。無知を自覚していたら「自分のレベルでは受けるべきではない」と尻込みした大きな仕事を彼は引き受け、その無知さと無能さにあきれた周囲の人が助けたおかげで成功しました。これは極端な例ですが、似たようなことはあちこちで実際に起こっています。もちろん、元々賢い人は努力しても「生まれつきのお馬鹿さん」になることは不可能です。そこで、Justinが生み出したのが、賢い人がお馬鹿さんから人生の知恵を学ぶという「Applied Stupidity(応用馬鹿学)」です。

Justinの本と私の出会いは偶然だと思っていたのですが、実はこれが”応用馬鹿学”の実践例だったようなのです。

私はレビュー用の献本を時折いただきますが、数では夫のDavid Meerman Scottの足下にも及びません。特に多いのは推薦文やブログでのレビューを求めるビジネス本作家からの献本で、ほぼ毎日届きます。知人のものであればともかく、何の予告もなく送られてくる多くの本に多忙な彼が目を通す暇はありませんし、暇ができたとしても読みたいのは自分の専門分野の本ではありません。ですからたいていの本は「積ん読(つんどく)山」に加わることになってしまいます。

積ん読山の整理をし、面白そうな本を選んで夫に渡すのが私の役割なのですが、正直言って多くのマーケット本はタイトルを読んだだけで眠くなってしまいます。その積ん読山の整理中に目を惹いたのがJustin LockeのReal Men Don’t RehearsePrinciples of Applied Stupidityでした。’Marketing 101’とか‘Who Moved My Job?’といったタイトル(実際のタイトルではなく、たとえです)の大手出版社によるハードカバーの海原で、「なんじゃこれ?」と首をかしげるようなタイトルの自費出版本は異常に目立ったのです。
Real Men Don’t Rehearseのページをぱらぱらとめくっていた私は、整理整頓中だということを忘れて抱腹絶倒。Justinのときに「しょうもない」感じのユーモアがこれほど可笑しく感じるのは、たぶん彼と私のユーモアのセンスが似てるからでしょう。(この本に関する詳しい内容は私のレビューをどうぞ)すっかり楽しませていただきました。私の推薦でこの本を読んだ夫もJustinのユーモアのセンスが気に入ったようで(その他の偶然もいくつか重なり)、自費出版のPrinciples of Applied Stupidityの改訂版に合わせて推薦文を書いたようです。土日も働く多忙な彼が、自分から「推薦文を書いてあげよう」と提案するのはほんとうに珍しいことです。私の夫に献本を送る多くの作家たちは、彼の専門分野を知っているので専門に近いマーケティングやPRの本を送って来ますが、Justinは「応用馬鹿学の法則」に従って常識はずれのユーモア本を送りつけたわけです。
生まれつきの馬鹿ではなくちゃんとわかってやっているところが「応用馬鹿学」。この本を読んで、私はJustinの知恵に「さっすが〜」と感心したわけです。

傑作中の傑作というわけではありませんが、発想の面白さに軽く笑いながら同感する類いの本です。特に次の2つの法則に頷く人はけっこう多いのではないでしょうか。

 

Stupidity and ignorance are infinite(愚かさと無知は無限である)
  どんなに知識がある人でもその知識には限界がある。けれども、無知には限界がない。限界がないというのは何でも起こりえるということであり、ここにこそ今の自分が知らないすごい可能性が潜んでいる

Accepting yourself as being stupid frees you from all sorts of pressures(自分が馬鹿だということを受け入れることで、もろもろのプレッシャーから解き放たれる)
 人は他人に馬鹿だと思われたくないから、自分の行動を制約する。けれども、いったん「他人に馬鹿だと思われてもかまわない」と開き直れば、実に多くの可能性を開くことができるのである。

●読みやすさ ★★★★

気が向いた時、ちょっと時間ができた時に軽く手に取ってちょっと読むことができる本です。英語に慣れていない人にもわかりやすいシンプルな文章です。

これは、Justinがテレビ番組に出演したときのビデオです。

米国の名門私立高校を舞台に思春期の複雑な心理を描いたミステリー All Unquiet Things

Anna Jarzab
352ページ(ハードカバー)
Delacorte Books for Young Readers
2010/1/12発売
ヤングアダルト(YA:高校生)/ミステリー/青春小説

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夏休みが終わりジュニア(米国は高校が4年制でその3年生)の学年が始まろうとしていたある日、Neilyが昔つき合っていた少女Carlyが殺害された。あれから1年経ち、シニア(4年生)の学年が始まろうとしているのに、Neilyはまだ事件の悪夢から立ち直れずにいた。

 NeilyとCarlyは、カリフォルニアの名門私立Brighton Day School の優等生が属する特別プログラムで知り合った。このプログラムに属する生徒は、学校の人気者たちからはクールではない連中として無視されており、NeilyとCarlyはそんな環境で互いを支えあう親友だった。親友として互いを知り合い、それから付き合い始めた2人の絆は簡単なことでは切れないほど強いものだと信じていたが、Carlyの従妹Audreyが引っ越してきたのとCarlyの母が卵巣がんで死んだのをきっかけに2人の仲に亀裂が入る。そしてCarlyは屈辱的な方法でNeilyを捨て、高校で最も畏怖され憧れられているAdamと付き合い始める。Carlyが殺される前日に助けを求める電話をかけてきたのに応えなかったNeilyは、自分を残酷に扱ったCarlyも、彼女を救えなかった自分も許すことができずにいる。

新学年が始まると、1年間別の学校に移っていたCarlyの従妹AudreyがDay Schoolに戻っていた。Audreyの父親はCarlyの殺人犯として逮捕されており、友人からの苛めにあった彼女は転校したのだった。彼女はNeilyに真犯人探しのパートナーになるよう頼むが、Neilyは戸惑う。そもそもCarlyがAdamとつき合うようになったきっかけはAudreyなのだ。AudreyのボーイフレンドCassとAdamは大の親友で、高校で最も人気あるグループを操っており、優等生のCarlyが酒やドラッグをするようになったのはAudreyがそれらの友人グループに彼女を誘い込んだからだ。

互いにあまり好感を抱いておらず、会うたびに互いを傷つける言葉を交わさずにはいられないAudreyとNeilyが交互に語るストーリーは、ミステリーとしてだけでなく、青春小説としても読み応えがある。

●ここが魅力!

米国の名門私立高校内の社会経済的構造、思春期特有の不安や葛藤、ティーンらしい恋愛観と執着心、お金はあるけれど崩壊状態の家族と崩壊した親子関係を、巧妙にしかも静謐に描いています。
Carly, Neily, Audreyの3人は自己中心的であまり好感を抱けませんが、それゆえに本物のティーンらしさを感じます。そして、事件を解決する過程で築き上げたNeilyとAudreyの友情と精神的な成長も、最後に青春小説らしい希望を与えてくれます。ミステリーとしてはゆっくりした展開ですが、静かに謎をひきずってゆくところがなかなか優れたスリラーです。

●読みやすさ ★★★★☆

YAものでしかも一人称で書かれているので、読みやすいと思います。会話文が多く、難しい単語もあまりありません。
また、YAものにしては静謐で詩的な文章に好感が持てます。

●アダルト度 ★★★☆☆

シーンの細かい描写はないのですが、セックス、レイプ、ドラッグなどの話題が出てきます。従って高校生以上が対象です。

16世紀のオックスフォード大学を舞台にしたインテリジェントなミステリー Heresy

S. J. Parris
448ページ(ハードカバー)
Doubleday
2010/2/23発売
ミステリー/スリラー/歴史小説/宗教

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1576年、イタリアの修道院の青年僧Giordano Brunoは知的好奇心のためにカトリック教会が禁じている本を読みあさり、「異教(heresy)」を信仰する者として処刑されそうになる。危機を逃れて逃亡者になったBrunoは、類い稀な頭脳とカリスマ性で逃亡者でありながらフランス国王に哲学者として寵愛されるまでになる。だがそこでも危険を感じるようになったBrunoは、カトリックと敵対関係にある英国に居場所を見つけようと考える。

当時の英国では、イタリアとは逆にエリザベス1世を首長とする英国国教会がカトリックを「異教」みなし、残酷な弾圧を繰り広げていた。Brunoは、エリザベス女王のスパイマスターとして知られる国務長官Walsingham卿の依頼でカトリック教徒の動向を探るスパイとしてオックスフォード大学に送り込まれる。オックスフォードで学者としての地位を得ることを望むBrunoはWalsingham卿の甥で友人のPhilip Siney卿に伴い客人としてオックスフォード大学を訪問するが、学者たちからの徹底的な敵意に遭遇する。
Brunoが体験したのは敵意だけではなかった。ある書物に書かれた異教徒への処刑の方法で、教官と学生が次々と殺害されていったのだ。彼はスパイでありながらRector(ここでは総長の意味)のUnderhillに協力して犯人探しをすることになり、危険に巻き込まれて行く。

●ここが魅力!

まず1583年のオックスフォード大学が舞台というのが私にとっては魅力でした。
英国ではヘンリー8世がキャサリン・オブ・アラゴンと離婚してアン・ブーリンとの結婚を計ったときにローマ教皇に拒絶され、それがきっかけとなって国王を首長とする英国国教会が作られました。 ヘンリー8世とその後継者エドワード6世の死後、カトリック教徒のメアリー1世がカトリックを復帰させるために残忍な弾圧を行い「Bloody Mary」と呼ばれましたが、彼女の死後エリザベス1世がふたたび英国国教会を復帰させます。

この時代は、欧州(とくにイタリア)ではカトリック以外の異教徒に対する残虐な弾圧が繰り広げられ、英国ではカトリックへの同様の残酷きわまる処刑が行われていました。異教徒の判決を受けた者は、まず絞首され、蘇生されてから生きたままにして内蔵をえぐられるという残酷な刑です。それでも隠れてカトリック教を信仰し続けた信者は多く、オックスフォードはその信者が多かった場所のようです。

Giordano Brunoは、作者のS. J. Parris(英国のジャーナリストStephanie Merrittの小説用ペンネーム)がケンブリッジ大在学中に文献で出会った実在の人物です。「哲学者、前科学者、マジシャン、詩人」という興味深い職歴で、逃亡者でありながら欧州各国の王宮で寵愛されてきたBrunoは、実際にとてもカリスマ性がある人物だったようです。Parrisの小説はもちろん創作ですが、この年実在のBrunoもオックスフォード大学を訪ね、ひどい体験をしたようです。
16世紀の英国の大学、政治と宗教のディテールが面白く、登場人物もよく描けています。謎解きに関しては満点をあげるわけにはゆきませんが、全体的には非常に満足できるインテリジェントかつ娯楽的な作品でした。

ダン・ブラウンの文章にこれくらいの知性があればもっと面白くなるのに、と思わせる本です。

たぶんこれはBrunoが主人公のシリーズになるでしょう。

●読みやすさ ★★☆☆☆

文章が難しいというよりも、ある程度宗教や政治についての知識がないと状況を把握することが難しいのではないかと思います。文章は「さすがジャーナリスト」という感じで、知的で押さえた感じの良文です。

●アダルト度 ★☆☆☆☆

「ラブシーン」と呼べないほどのキスシーンが1箇所だけ。それよりも殺人や処刑の部分が子供には向きません。中学生以上。

家族の良さを感じさせてくれる小学校高学年から大人向けの児童書 The Wanderer

Sharon Creech
320ページ(ペーパーバック)
HarperCollins; Reprint
2002/3/26
小学校高学年から中学生向け/航海/日記形式の小説/家族ドラマ

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13才の少女Sophie(ソフィ)は、母親方の叔父Dock, Mo, Stew、従兄のCody、Brianと一緒にアメリカ北部から祖父の住む英国へヨットで航海することになる。この物語は、Sophieと従兄のCodyの航海日誌で綴られる。

冒頭で両親と自分の性格の共通点を語るSophieの日誌を読んだ読者は、Codyの日誌になってSophieが3年前にひきとられたばかりの孤児だと知って驚くだろう。Sophieの日誌に登場する家族たちは彼女の血縁のように描かれているからだ。それだけでなく、航海の途中でSophieは家族にBompieの幼い頃の逸話を次々と語って聞かせる。叔父や従兄はそんなSophieの行動をどう解釈してよいのか戸惑う。「孤児」という言葉を出して嫌みを言ったり、直接質問をするBrianに対し、CodyはSophieの心情を気遣いながら観察する。

Sophieの過去とBompieの逸話の謎が中心にあるThe Wandererの重要なテーマは家族の絆である。
Dockという名の叔父は優しいが妻子のいない独り者である。Codyの父Moは息子や妻に暴力を振るう怠け者で、StewとBrianの父子は他人にあれこれ指図をして神経を逆撫でする。狭いヨットに閉じ込められてときおり険悪な雰囲気になる家族だが、大嵐を体験して絆を強める。

ニューベリー賞オナー入賞作

●ここが魅力!

Sophieが会ったこともないBompieの逸話を語るのは、夢見がちな彼女の創作なのか、それとも他に理由があるのか、この謎をSophieの日誌とCodyの日誌で追うのが面白いところです。また、航海の様子なども興味深く、まだ洋書を読むのに慣れていない大人におすすめの作品です。

●読みやすさ ★★★★☆

航海独自の単語や表現が出てきますし、”giddy up(乗馬用語のhurry up)”や”beauteous(becautifulの詩的表現)”といったこの家族が内輪で好んで使う表現などもありますが、それらをあまり気にしなければ簡単な英語です。320ページですが、1ページの文字数が少ないので実際はその半分くらいです。

●アダルト度 ☆☆☆☆☆

小学校低学年でもまったく問題のない作品です。

信仰と温情を扱う人間洞察のミステリー Secrets of Eden

Chris Bohjalian
384ページ
Shaye Areheart Books
 2010/2/2
文芸小説/ミステリー(のジャンルではないが、その要素が強い)

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「Midwives」「The Double Bind」で有名なChris Bohjalianの最新作。

(さらに…)

The Time Traveler’s Wifeを期待すると失望するゴーストストーリィ Her Fearful Symmetry

Audrey Niffenegger
416ページ (ハードカバー)
Scribner
2009/9/29
文芸小説/現代小説/幽霊/ラブストーリー/双子

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映画化もされたベストセラーThe Time Traveler's Wifeの作者 Audrey Niffeneggerの第二作は、英国のハイゲイト墓地が舞台のゴーストストーリィである。

EgyptianAvenue_HighgateCemetary 白血病で死んだElspeth Noblinは、英国のハイゲイト墓地と地続きの建物にある広いアパートメントを米国シカゴ市に住む双子の姪JulieとValentinaに遺す。彼女たちの母親EdieとElspethはかつてひとときも離れられないほど仲が良い一卵性双生児だったが、ある出来事をきっかけに接触を絶っていた。JulieとValentinaは一卵性双生児というだけでなく、内蔵までが対称的なmirror image twinsである(ミラー・ツイン:やや後期に受精卵の分裂が発生した場合に起こると考えられており、一卵性双生児の25%で発生)。

内蔵が逆さまになっているValentinaは身体が弱く、いつも気の強いJulieの言いなりになっている。大学を辞めたいJulieとそれに従って一緒にやめたValentinaは無職のまま両親の家でゴロゴロしているだけだったので、Elspethの奇妙な条件にもかかわらずアパートに移り住むことにする。

Elspethのアパートの下階には彼女の年下の恋人Roger、上階にはOCD(強迫性障害)のMartinが住んでおり、ValentinaはRogerに強く惹かれる。JulieはValentinaとRogerの仲に嫉妬するが、ValentinaはそんなJulieからますます離れたいと願うようになる。Rogerも
Valentinaと出会ったことでようやくElspethの死から立ち直りかけていたが、幽霊としてアパートに取り憑いてしまったElspethがあらわれ、彼らと交信しはじめる。

●感想

The Time Traveler’s Wifeは少々メロドラマチックすぎるところがありましたが、ストーリーテラーのしての手腕を感じるなかなかの傑作でした。その作者が、英国、墓地、幽霊、双子、OCD…という私ごのみのテーマが揃った新作を書いたというのですから期待せずにはいられません。ことに舞台になったハイゲイト墓地はとても魅力的な場所です。20年前に訪問した印象が今も強く残っています。

叙情詩的な文章と、OCDのMartinとその妻のMarijkeの逸話は美しく、これらだけであれば私は5つ星を与えたでしょう。 ですが、正直言って、メインの「ラブストーリー」にはがっかりしました。まずMartin とMarijkeを除き、すべての中心的登場人物に魅力を感じません。The Time Traveler’s Wifeにもそういうところはあったのですが、他人を愛する理由がただのObsessionというのはいただけません。理屈抜きの病的なObsessionがある筈のMartinとMarijkeの愛情のほうが説得力があるというのはなんとも皮肉なものです。
プロットもバラバラで、ElspethとEdieが守った秘密も現実味がなく、エンディングも後味が悪いものでした。

救いがあるとしたら、MartinとMarijkeの静かなラブストーリーです。アパートから一歩も外に出られないMartinとオランダに住む妻のMarijkeが別々の場所にいながら夕食を共にするシーンには、じんとします。これだけでしたらおすすめの作品です。

●読みやすさ ★★★☆☆

文章は美しく、特に難しいものではありません。

●アダルト度 ★★★☆☆

性的なシーンはいくつかありますが、The Time Traveler’s Wifeよりややマイルドかな、という感じです。高校生以上向け。