人生の敗者復活戦への希望が生まれる旅行記 Eat Pray Love

Elizabeth Gilbert
352ページ(ソフトカバー)
Penguin
2006年初版
エッセイ/回想録/旅行記

AERA English 10月号で推薦している作品のひとつ。

困難な離婚とその直後の辛い恋愛で心身ともにボロボロになった著者のElizabeth Gilbertが、スピリチュアリティと 幸福を求めて3つの国を旅する旅行記。
ようやく夫が離婚を承諾し本のアドバンス(前払い)を得たElizabethは、まず最初にイタリアを訪問する。彼女がイタリア語を勉強したかった理由はひとつ。それが美しい言語だからだ。精神的苦悩でやせ細っていたElizabethだが、食べること(Eat)を含めたイタリアの生活を満喫することで、人生を楽しむ心と体重を取り戻す。その後、彼女はインドに渡り、ヒンドゥー教の僧院(アシュラム)で瞑想を学ぶ(Pray)。そして、最後に訪れたバリ島で、思いがけない愛(Love)を見つける。

●ここが魅力!

離婚とそれに続く恋愛の破綻で鬱になっていた著者が、イタリア、インド、インドネシアを旅するうちに心身を癒されてゆくこの旅行記は、どん底からハッピーエンドまでがまるで小説のようにドラマチックです。
恋愛で辛い状況にいる人がすがりつきたくなる文章も沢山出てきます。
たとえばソウルメイトだと思っていた相手と別れる辛さについて、インドのアシュラムで知り合ったテキサス人の男性がこんなことを言います。

A true soul mate is probably the most important person you’ll ever meet, because they tear down your walls and smack you awake. But to live with a soul mate forever? Nah. Too painful. Soul mates, they come into your life just to reveal another layer of yourself to you, and they they leave. And thank God for it.

「なるほど、こう思えば別れが納得できる」と思わず頷くような台詞ではありませんか。

まるで作り事のようなハッピーエンドですが、35歳になったエリザベスはこう言います。

I was not rescued by a prince; I was the administrator of my own rescue.

つまり、王子様に救出してもらったのではなく、自分で自分を救ったのだというところです。このあたり、もうさほど若くない女性が勇気づけられるかも。

著者の自己憐憫を嫌う読者もいるようですが、 かえってリアリティがありますし、ユーモアに満ちた軽い文章なので私は気になりませんでした。
美味しい食べ物、著者が巡り会う人々、奇跡のようなグルの予言と祈りの結果、そして本物の愛…、とノンフィクションにしては出来過ぎのような気もしますが、いちいち皮肉な見方をせずにどっぷり楽しむことをおすすめします。「誰にでも敗者復活戦のチャンスはある」と思わせてくれる本です。
著者は(米国に多いキリスト教の読者を意識してのことでしょう)Prayの部分でも宗教色はおさえ、自分のスピリチュアリティに焦点をあてています。押し付けがましくないし、ユーモアがあるので、宗教アレルギーの私でも、すんなり受け入れることができました。

余談ですが、Elizabeth Gilbertは現在ニュージャージーに住み、輸入品のお店を持っています。義弟がその近くに住んでいて、姑は先日彼女のお店に行ってきたようです。映画化のせいで彼女目当ての観光客が増えたようで、本屋でお店の場所を訊ねようとしたら、Gilbertの名前を出した時点で「家の住所は教えませんよ!店なら教えますけど」とぴしゃりと言われたとか。姑は「最初から店の住所を訊ねようと思っただけなのに」と愚痴を言っていました。

映画のトレイラーです。

●読みやすさ 中程度

一人称ですし、文章そのものは簡単です。
長めですが、旅行記ですから、焦らず、少しずつ気楽に読むようにしましょう。

●アダルト度

あからさまな場面は出てきませんが、セックスの話題は頻出します。
高校生以上

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 助産師としてキャリアをスタート。日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 500 reviewer.

人生の敗者復活戦への希望が生まれる旅行記 Eat Pray Love」への4件のフィードバック

  1. ゆかり様、こんにちは
    とても興味を引かれる設定ですね~。
    soul mateも去る者は追わず、来るべき時に神様が配して賜う、と信じて私も放浪の旅を続けてみようという決意が湧いてきました。(笑)
    ちょうどジュリア・ロバーツがこの映画のPRで来日したというニュースを聞いたばかりで、グッドタイミングでした!
    長年日本に来なかったのは日本嫌いだから?という噂があったようですが。。。
    前回の南アのミステリーというのも、これまた珍しいご本をご紹介いただいてありがとうございます。

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  2. Nemoさん、反応はや〜い!
    これ、けっこう昔に出版されてもうベストセラーになっていたから、なんとなく紹介し損ねていたのですよね。でも、映画化されたし、良い機会かと思って。でも詳細すっかり忘れていたので、また読みなおして楽しめました。
    くどいところやナイーブなところもあるけれど、それも含めて楽しむのがよいかと思っています。

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  3. 私もソウルメイトについて書かれた部分がとても印象に残りました。
    “People think a soul mate is your perfect fit, …But a true soul mate is a mirror,…”
    オーディオブックを聞きながら読んだのですが、著者朗読だったので、まるで彼女から直接旅の話を聞いているような気分で読めました。機会があればまた読み直してみたい一冊です。

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