この夏刊行のDraculaもの2作 Dracula, my Love と Dracula In Love

Twilightの成功のせいなのか、この夏は売れっ子作家によるDracula
のスピンオフが2作も刊行されました。題名が酷似しているだけでなく、Minaの視点から描いたロマンスという点でも同じ。偶然とはいえ、作家の方々は嫌だったでしょうね。

ARCをいただくチャンスがありましたので、原作と照らし合わせて2作を読み比べることにしました。

Dracula


Dracula, My Love

480ページ(ペーパーバック)

Avon

2010年7月20日発売

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著者のSyrie Jamesは、世界的なベストセラーになったThe Lost Memoirs of Jane Austen
の作者。

原作のDraculaは、Jonathan Harker(Minaが婚約し、結婚する他相手)、Mina、Lucy、Dr Seward,の日記や手紙で展開するが、Dracula My Loveは、Minaによる告白日記。

Draculaは、Jonathanが持ち込んだ写真を見てMinaに恋をし、彼女を手に入れるために英国にやってくる。Jonathanの留守にDracula伯爵と出会い、強く惹かれるものを感じたMinaは、Jonathanを愛しながらも性的魅力があるDraculaを拒むことができない。DraculaがMinaに恋をした理由は、400年以上前にDraculaが体験した悲劇が関連していた。Minaに告白したDraculaの過去は同情に値するものだが、果たしてそれはどこまで本当なのか?この恋は純粋なものなのか?

MinaとDraculaのロマンスという点では後述のKaren Essexの Dracula In Loveと共通しているが、Essexのものよりも、原作に沿ったストーリー展開。ロマンスだが、In Loveのほうよりも落ち着いた文章であり、登場人物(特にJonathan)が原作からさほど変わっていないところには好感を抱けるかもしれない。

しかし、原文とまったく同じ部分も多く、わざとだとは分かっていても「手抜き」感覚は否めない。そして、まったく悪い子ちゃんになりきれないで自分にまで言い訳するMinaが、女性の私でも好きにはなれない。原作のMinaのほうが知的で好感が抱けたのは私だけだろうか?

●アダルト度

ロマンスですし、ヴィクトリア時代に否定されてきた重要なポイント(ドラキュラの性的魅力と女性の性的欲求など)を描こうとしているものですから性的な表現はあります。でも、次のDracula In Loveより表現は奥ゆかしいです。

Dracula In Love

384ページ (ハードカバー)

Doubleday

2010年8月10日発売

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著者のKaren Essexは、国際的ベストセラーになったLeonardo's Swans
の作者。

上記と同じくMinaの一人称で書かれているが、ブラム・ストーカーのDraculaとは筋書きがずいぶん異なる。ストーカーと思わせる人物が登場し、彼が実際に起こったことを自分なりに勝手に解釈して書いたことを示唆している。つまり、原作が創作で、これが事実だという筋書きだ。

Dr. Sewardが経営している精神病院に入院しているのは、当時異常だとみなされて隔離されたノーマルな性的欲求を持つ女性たちである。Dr.Von Helsinger、Dr.Seward, Arthur Holmwood、Jonathan Harkerといった男性は、女性である私が読んでも眉をひそめたくなるほど愚かで、男尊女卑のステレオタイプに描かれている。これらの点では、非常にフェミニスト的なロマンスなのだが、女性のLucyやMinaも男性同様に好感を抱けない。一番同情に値するのがDraculaだったりするから面白い。このDraculaも身勝手な点では同じなのだが。

EssexのDracula In Loveは、上記のMy Loveよりも、MiraとDraculaの関係がパラノーマルロマンス的である。原作から離れて自由な展開をしている点では、上記よりも読み応えはある。しかし、好感を抱ける人物がひとりもいないし、ときおりどうしようもなくチープなロマンスブック的になるのは残念でならない。

運命に否定され続けているDraculaの悲恋という意味では、こちらのほうが面白い。

●アダルト度

上記のDracula, My Loveよりエロチック・ロマンスブック的な表現が多い。その辺りで、突然チープな感じになるのが残念でもある。

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 助産師としてキャリアをスタート。日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 500 reviewer.

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