18世紀のケンブリッジ大学を舞台にした、雰囲気たっぷりの歴史ミステリー The Anatomy of Ghosts

Andrew Taylor
ハードカバー: 432ページ
出版社: Hyperion (2011/1/25)

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今月25日発売予定(私が読んだバージョンはARC.)

  18世紀後半の英国が舞台。印刷業と書籍販売で富を地位を得ていたHoldsworthは、幼い息子の事故死をきっかけにすべてを失う。住処すら失いかけている彼に、彼の著作「The Anatomy of Ghosts」を読んだビショップの未亡人Lady Anne Oldershawが仕事を依頼する。


Everywhere.1176308460.p4091407 ケンブリッジ大学のJerusalem校(架空の学校。構造上では右のEmmanuel校をモデルにしているらしい)で学ぶ未亡人の息子Frank OldershawがSylvia Whichcoteの幽霊を見て以来精神状態が不安定になり、施設に収容されている。幽霊などいないとFrankに悟らせ、母のもとに連れ戻す役目だった。

Lady Anne Oldershawは、歴代Jerusalem校に深い関わりを持つ有力者である。だが、その彼女ですら直接踏み込むことができないのが、大学の閉じた世界である。そこで、Lady Anneは、表向きは寄贈のための大学図書館の視察という形でHoldsworthを送り込み、息子の状況を報告させ、連れ戻させることを考えたのだ。

ケンブリッジ大学Jerusalem校でHoldsworthを待ち受けていたのは、学長(Master)のDr. CarburyとFrankの指導者でフェローのRichardsonとの間の確執や、金持ちの学生を食い物にするWhichcoteといった者たちの策略や秘密だった。Holdsworthの唯一の味方は、学長の妻Elinor Carburyだが、この協力関係も 彼にとって脆く危いものだった。

●ここが魅力!

18世紀、英国、しかもケンブリッジ大学が舞台のミステリー…という、私の好きなジャンルです。
期待どおりだったのは、あの時代の大学の閉ざされた世界の描きかたです。金持ちの学生とそれらの学生に仕えて金を稼ぐしかない貧乏な学生、使い走りをする特別な職種、窮屈な人間関係とヒエラルキー、その狭い世界でしか通じない規則やモラル、などを興味深く読むことができます。

やや残念だったのは、先がけっこう読めてしまったことと、終わりかたの甘さです。幽霊の設定や登場人物の人物造形をもう少し頑張って欲しかったようなところも。

けれども、「面白い」という点では文句はありませんでした。
ミステリーだけに注目する人はスローな展開だと思うかもしれませんが、私は歴史的な詳細を読むのが好きなのです。
以前ご紹介したHeresyThe Devlin Diaryもそうでしたが、ミステリーそのものよりも、その時代の雰囲気にひたらせてくれるところが、このジャンルの良さです。
そういった意味で、Anatomy of Ghostsには満足しました。

The Pillars of the Earth が好きだった方にも(ジャンルは異なりますが)おすすめです。

●読みやすさ 普通〜やや難しい

18世紀の英国を舞台にした歴史ものとしては、非常に読みやすい文章です。もったいぶった言い回しはなく、シンプルな文章です。
英語に慣れていない人が難しく感じるのは、当時の口調に近くしようとした会話の部分でしょう。

●対象となる読者

金持ちの学生が対象の秘密クラブの怪しげな冒頭シーンにも関わらず、さほど露骨な表現や場面はありません。けれども、この秘密クラブのコンセプトを考慮して高校生以上が対象。

●こういった本が好きなら…

Heresy

The Devlin Diary

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