米国での本の売れ行きに貢献するパラノーマル・ファンタジー(ロマンス)

アマゾンやバーンズ&ノーブルの『Science Fiction & Fantasy(SFとファンタジー)』のカテゴリーで本を探したことがある人はお気づきでしょうが、SFとファンタジーといってもサブジャンルがいろいろあり、好みの本を選ぶのは難しいものです。 


現在よく読まれている「SFとファンタジー」のサブジャンルには次のようなものがあります。

1)主流のSF (宇宙旅行、エイリアン、タイムトラベル、未来のディストピアなど)

2)主流のファンタジー(魔術、妖精、ドラゴン、伝説の生物など)

3)子どもあるいはYA(ヤングアダルト)を対象とした主流のSFあるいはファンタジー(最近の代表作:Harry Potter, The Hunger Games)

4)テクノスリラー(インターネットなどの最新IT技術をテーマにしたもの)

5)サイバーパンク/スティームパンク(テクノロジーの過剰な発達を土台とした世界や作品。80年代はサイバーパンク、最近は蒸気時代のスティームパンクが流行)

6)パラノーマル・ファンタジー・ロマンス(登場人物が吸血鬼、狼人間、妖精、魔女、魔法使いなどパラノーマルな存在で、ジャンルはロマンス。最近の代表作:Twilight)

 

人気のサブジャンルは流行により移り変わるものですが、最近の「Science Fiction & Fantasy ベストセラーリスト」を追っていると、6)のパラノーマル・ファンタジー・ロマンスの異常な人気を思い知らされます。

このサブジャンルを支えているのはロマンスブックファンであり、アメリカで最も購買意欲がある読者層でもあるのです。これまでSFやファンタジーに興味を抱かなかった人々がこのジャンルのベストセラーを決めているというのは、不思議な現象です。

 皆さんもご興味があるだろうと思いましたので、よくベストセラーリストでみかけるシリーズ(あるいは三部作)をチェックしてみました。

 

1.Soulless (The Parasol Protectorateシリーズ)

 

 

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●内容

ビクトリア時代の英国で、貴族社会と政治に狼人間と吸血鬼が公的に混じり合っているという設定。

スティームパンク的な要素と、コメディの要素が強いファンタジーロマンス。

主人公は上流階級の長女Alexia Tarabotti。イタリア人とのハーフで、鼻がでかく、食いしん坊で、太めで、しかも学問が好きな頑固者のAlexiaは、25歳ですでに売れ残りが決定している。

それだけでなく、Alexiaは生まれつきSoul(魂)がない「soulless」という特殊な存在なのだが、これは家族にも知らせていない極秘だった。彼女が手を触れると、soulが有り余った存在である吸血鬼や狼人間は普通の人間になってしまうのである。

パーティの席でうっかり吸血鬼を殺してしまったAlexiaは、犬猿の仲で、政治的に大きな影響力を持つアルファ狼人間のConall Maccon卿に協力しなければならなくなる。

ファッションにこだわる吸血鬼の貴族Akeldama卿など、癖がある変わり者が沢山登場する。

●良いところ

AlexiaとConallのコミカルなやりとりと風変わりなロマンスは面白い。

売れているだけあって、よくある「パラノーマル・ファンタジー」よりは設定もプロットも凝っている。

漫画を読んでいるような感覚。

●ダメなところ

スティームパンクの要素は強いが、さほど複雑なものではなく、ファンタジーやミステリーのファンを満足させるほどのプロットではない。

●エロチック度

ラブシーンはあるけれども、さほどエロチック度は高くない。

●読みやすさ 読みやすい

 頭を使わずに軽く沢山の本を読みこなしたいという女性におすすめ。

Twilight程度の難易度。

 

 

2.Halfway to the Grave (Night Huntressシリーズ) 

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●内容

人間と吸血鬼のハーフという稀な存在のCat Crawfieldは、母から教わった「悪の存在」である吸血鬼を狩っては殺している。

これまで失敗したことがなかったCatだが、ある夜ターゲットにした吸血鬼につかまってしまう。そのBonesという吸血鬼は、彼女を自由にする引き換えに条件を提示する。

●良いところ

ロマンスブックとしては、しっかりとしたプロットがある。

強くて自信満々でユーモアのセンスがあるBonesのキャラクターが女性の読者に人気がある。また、BonesとCatの起伏に満ちたロマンスが「癖」になるらしい。

アクションシーンや感情的な場面が多く、退屈はしない。

追記:下記に「Trashy」と書きましたが、そうとわかっていて、「ただ楽しんじゃおうっ」と思う分には爽快感があるGuilty pleasure本です。

●ダメなところ

非常にtrashy。アクションに満ちているが、知性と考察が足りないので(主流のSFやファンタジーファンの立場からは)ストーリーに魅力が感じられない。

主人公の言葉遣いが下品で思考が単純すぎる。

 

●エロチック度

高い。セックスシーンが多い。

 

●読みやすさ 読みやすい

文章そのものは非常に簡単だが、造語や架空の組織名などがある。

 

その他のパラノーマルシリーズについては(ちょっと古めですが)以前にご紹介したこちらをどうぞ。

 

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 助産師としてキャリアをスタート。日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 500 reviewer.

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