静謐な文章でタスマニアの海と少年たちを描いた作品 Past the Shallows

Favel Parrett

ペーパーバック: 288ページ

出版社: John Murray Publishers Ltd (2012/8/30)

ISBN-10: 1848547501

ISBN-13: 978-1848547506

発売日: 2012/8/30

文芸小説/タスマニア

2012年「これを読まずして年は越せないで賞」候補作(ちょこさん推薦)

2012 Dobbie女性新人賞、 Miles Franklin賞などいくつかの賞最終候補作

 

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タスマニア南東のさびれた沿岸に住むJoe, Miles, Harry三兄弟は、母親が交通事故で死亡してから父親の感情の起伏に怯えながら生活してきた。

19歳のJoeが家を離れてからは、次男のMilesの背には重い責任がのしかかっていた。まだ成長しきっていない年齢で荒れた海での危険な漁を手伝わされ、弟のHarryを父の暴力から守ろうとするのだが、それは容易なことではなかった。


父以外の誰からも愛されている末っ子のHarryは、ひとりでいろいろな場所を探検し、些細なことに楽しみや喜びを発見し、秘密の友人も見つける。

だが、父親の心を蝕んできた秘密が、ついに破滅的な状況を引き起こす。

 

●ここが魅力!

Favel Parrettの文章はシンプルなのに非常に味わいがあります。

先日ご紹介したJKローリングの新作は、陳腐な表現や決まり文句、余計な描写の結果、登場人物全員がカリカチュアになり、物語としての本物らしさを失っていました。

ですが、新人のParrettは、余計な表現を削ぎ取ることにより、かえって多くのことを伝えています。タスマニアの過疎地の厳しい生活、父親を恐れながら生きる兄弟の心境、といった部分は、ローリングが取り上げた社会問題を、ローリングよりも鮮やかに描いています。

 

何よりも私が好きだったのは、Milesと海の部分です。泳がない人でも、波の力を感じることができる表現力です。

ただ、個人的には、他の作家が書いていない新しいものが欲しかったです。

これまでに読んだ作品を思い出させる部分が多く、新鮮さに欠けていたように感じたのですが、それは私があまりにも多くの本を読み過ぎているせいでしょう。

そうでない人には、胸にずしん、とくる内容ですし、きっと読了後も少年たちのことを思い出すことでしょう。

 

●読みやすさ 普通からやや読みやすい

簡潔な文章ですし、短いので読了しやすいと思います。

 

●おすすめの年齢層 中学生以上

暴力や死などありますし暗い内容なので、そういうものが苦手な子にはおすすめできません。

けれども、アメリカであればYA(ヤングアダルト)のカテゴリーに入ったかもしれない内容なので、中学生から高校生にもおすすめします。

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 助産師としてキャリアをスタート。日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 500 reviewer.

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