短いのに満足感があるヒューゴ賞受賞(中長編部門)の『The Emperor’s Soul』

著者:Brandon Sanderson

ペーパーバック: 175ページ(キンドルあり)

出版社: Tachyon Pubns

ISBN-10: 1616960922

発売日: 2012/10/10

難易度:中級レベル(高校英語をマスターしたレベル)

適正年齢:PG12(中学生以上)性的コンテンツはゼロだが小学生には内容が難しい

ジャンル:ファンタジー/SF

キーワード:魔術

賞:2013年ヒューゴ賞受賞作

 


Elantris
と同じくSelが舞台だが、本書ではそこから離れた皇国が舞台。
国宝の美術品を偽造して逮捕された若い女Shaiは、死刑を目前にして皇帝の側近たちから取引を持ちかけられる。それは、敵の派閥が送り込んだ暗殺者により脳死状態になった皇帝の魂を偽造することだった。


皇帝が死去すると、暗殺者を送り込んだ強力な派閥が現政権を覆し、側近たちは権力を失う。側近たちは、偽物と分からない程度の皇帝を作り上げて彼が生存していることを国民に見せなければならないと焦っていたのだ。

Selの世界での偽造師は、物や人の歴史を変異させることで物や人そのものを変える。Shaiが偽造した美術品から、彼女の腕前が最高レベルのものであることは明らかであり、側近たちは、皇帝の魂も国民にバレない程度には偽造できるのではないかと思ったのである。

Selの世界での偽造師は、物が持つ歴史を変異させることで物質を変える。その情報を組み込んだ朱印のようなハンコを押すことで、物質を根本的に変化させることができるのである。Shaiが偽造した美術品から、彼女の腕前が最高レベルのものであることは明らかであり、側近たちは、皇帝の魂も国民にバレない程度には偽造できる筈だと思いついたのだ。

成功するとは思えない難業だったが、偽造に関する側近たちの無知を利用し、Shaiは「できる」と引き受ける。死刑執行予定日は翌日に迫っており、それ以外の選択はなかった。だが、賢いShaiは、この仕事を成功させても、口封じに殺されることも予期していた。有能であることを示しつつ、時間稼ぎをしながら逃亡する方法を考えねばならない。Shaiは綿密な頭脳ゲームを編み出す。

 

たいていのBrandon Sandersonの作品は思い切り長い長編なのだが、嬉しいことに、これは数時間で読み切れる中篇である。主人公Shaiは(地球ではないけれども)中国系と思われる設定で、叡智があり、道理を通し、クールでカッコいい。彼女の人間分析も面白く、皇帝を息子のように思いやる老いた側近Gaotonaとの関係もいい。そして、Sandersonの作品の魅力のひとつでもある、物質の要素を変化させるファンタスティックな科学も健在である。

今年6月にニューヨークのブックエキスポでBrandon Sandersonに会い、Mistbornを『洋書ベスト500』のひとつに選んだことを伝えると喜んでいただけた。

 

Photo

『洋書ベスト500』のお祝いサインいただきました!おしゃべりに夢中で、本人との写真とるのを忘れちゃいました(涙)

 

そういった体験もあるので、ファンとしても本作品のHugo賞受賞が自分のことのように嬉しい。

Elantrisを読んでいない人でも単独の中篇として読めるので、Sanderson未体験の人はぜひお試しいただきたい。

2 Comments

  1. どうもご無沙汰です。2013年のヒューゴ賞ではこちらが一番楽しめました。Brandon Sandersonの作品では長さも程よく、絶対絶命中での頭脳戦・心理戦は読んでいて楽しいですね。また、SFには結構珍しく人間描写がよくキャラがたっています。科学的エピソードもGOOD.ただ、個人的な趣味ですが、と主人公がCOOLすぎるのがちょっと。やっぱりどこか抜けてて普段がダメなやつが必死で頑張る系が好きかな。
    もうひとつはラストがまとまり過ぎてる感がします。「ええ、何故」みたいなラスト好きな私にはそこが少し残念。
    とはいえ、世界観や描写は素晴らしく楽しく読める一冊ですね。

  2. お返事が遅れてごめんなさい。
    南極旅行中、ぜんぜんネットに接続できなかったんです。
    そうですね。彼の主人公になる女性はクールすぎるかもしれないです。世界観が素敵な作家なので、他の作品もぜひお試しくださいませ!

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