不利な条件を利点に転換する発想『 David and Goliath』

著者:Malcolm Gladwell

ハードカバー: 320ページ

出版社: Little, Brown and Company

ISBN-10: 0316204366

発売日: 2013/10/1

適正年齢:PG12(中学生以上)

難易度:中級レベル(高校英語をマスターしたレベル)、難しい単語はあるが。ストレートで分かりやすい文章

ジャンル:応用心理/社会学/ノンフィクション

キーワード:モチベーション、不利な条件の克服、発想の転換、成功

 


 

The Tipping Point
, Blink
,Outliers

といった話題作を次々と生み出してきたマルコム・グラッドウェルの最新作は、旧約聖書の有名な逸話「ダビデとゴリアテ(David and Goliath)の闘い」をテーマにしている。誰もが怖れるペリシテの巨人兵士ゴリアテをイスラエルの羊飼いの少年ダビデが石で打ち負かしたストーリーは、不利な条件の弱者が恵まれた条件の強者を破ることの例えによく使われている。


一見珍しい出来事に思えるが、実はこのシナリオは意外ではないとグラッドウェルは言う。実際には、不利な条件があるからこそ、人々はそれを克服するためのモチベーションを持ち、小さなサイズや不利な条件を利用する戦略を練り、恵まれた条件の者たちを倒してきたのである。

これまでの本のようにグラッドウェルは多くの実例を紹介しながら独自の結論を導き出している。

例に使われているのは、中学校の女子バスケットボールチーム、アラビアのローレンス、学校でのクラスの適正人数と逆U型グラフ、ハリウッドの成功者を例にした「too big, too richの悩み」、dyslexia(ディスレクシア、識字障害)、60年代アラバマでのアフリカ系アメリカ人の公民権運動、犯罪の被害者の家族の選択、北アイルランド問題での英国の対応…とバラエティに富んでいる。

私が特に興味深く思ったのは、インド人実業家Vivek Ranadivéの逸話である。娘が中学校のバスケットボールチームに入ったためにそのコーチを引き受けたとき、インド生まれのRanadivéはバスケットのことなどは知らなかった。そのうえ彼の娘のチームの大半は、親がシリコンバレーで働いている勉強好きのナードな子どもばかりである。そんなチームが、背が高い子ばかりが揃った典型的なアメリカのバスケチームに勝てるとは誰も想像しなかった。よそのチームのコーチは、子ども時代からバスケットボールをしている血の気が多いタイプばかりだ。だが、MIT卒業の優れたビジネスマンであるRanadivéは、他のチームとはまったく異なる戦略で、このチームを全国レベルに引き上げたのである。彼に興味を抱いた私は、この本で紹介されているだけでは物足りなくてネットで調べたのだが、彼自身が障壁を乗り越えてアメリカに移住し、大成功をおさめた例として面白かった。もっと掘り下げて紹介してもらいたかったものである。

ほかにも、「良い大学に入学したほうが有利だ」という思い込みを覆す部分や、逆境を利点に変える発想、そして「恵まれていることは必ずしも良いことではない」という点は、「良い大学を卒業しても就職口がない」と嘆く今の日本人の若者にとって発想の転換になるかもしれないと思った。

彼の着眼点と実例は面白いし、部分的に同感するところはいくつもある。だが、これまでと同様に、私にとってのグラッドウェルの問題は結論の部分にある。単純すぎるし、そこに辿り着く経路が納得できないのだ。

欠陥はあるにしても、グラッドウェルの本は日本人にも読みやすいし、他の人とのディスカッションにも向いている。また、自分自身の考え方を問い直すためにも、読むに値する本である。

 

 

 

 

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