現代版のグリム童話のようなYA小説『Far Far Away』

著者:Tom McNeal

ハードカバー: 384ページ

出版社: Knopf Books for Young Readers

ISBN-10: 0375849726

発売日: 2013/6/11

適正年齢:PG12(中学生以上)

難易度:中級と上級の中間(古風な言い回しや難しい単語はあるが、入り込みやすいストーリー)

ジャンル:YA(ヤングアダルト)/ホラー

キーワード:グリム童話、幽霊、成長物語、ファンタジー、心あたたまる

賞:2013年全米図書賞最終候補

 

死と生の間に閉じ込められて彷徨っていたグリム兄弟の兄Jacobの魂は、彼の声が聞こえるシャイで孤独な少年Jeremy Johnson Johnsonと巡り合い、ぴったりと付き添うようになる。無責任な母が去ってから引きこもりになった父の面倒をみているJeremyは、祖父から引き継いだ書店も守ろうとするが、高校生の身分ではそれもままならない。Jacobの幽霊は少年の将来を案じて勉強を促し、ときに援助しようとするが、自分の決断を重視するJeremyはわざと幽霊の声を無視することがある。


Jeremyは、夏休みの間に芝刈りのアルバイトで借金を減らすつもりでいたが、奔放で魅力的な少女Gingerのいたずら計画に巻き込まれてクライアントをすっかり失ってしまった。Gingerにそそのかされてベーカリーに侵入したのがバレてしまったのだ。Prince Cakeという特別なケーキで有名なベーカリーのオーナーSten Blixは、警察に「犯人は彼ではない」と証言しただけでなく、町民たちから冷たく扱われて孤立しているJeremyとGingerに仕事を与えてくれたのである。

だが、Jeremyの世界は、まるで古い童話のように変貌してゆく…

 

グリム兄弟のヤーコプ・グリムの幽霊が登場するだけあって、グリム童話を連想させるゾクゾクした怖さがある。また、ちょっとニール・ゲイマン的な雰囲気もある。

何よりも好感を抱けるのが、Jacobの後悔と葛藤である。JeremyとGingerの運命もさることながら、Jacobが幽霊としてこの世にとどまっている理由も興味深く追うことができる。読後感が良いので、ホラーが苦手な方にもおすすめ。

やや難しい表現や、ドイツ語なども出てくるが、入り込みやすく、分かりやすい。

2013年の全米図書賞最終候補。

 

 

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