簡単な英語で複雑なプロットが楽しめるエドガー賞候補『All the Truth That’s in Me』

著者:Julie Berry

出版社: Viking Juvenile

ISBN-10: 0670786152

発売日: 2013/9/26

適正年齢:PG15(高校生以上、性的な話題はあるが露骨な描写はない)

難易度:初級〜中級(やや難しい表現もあるが、文章は短く、中高の教科書レベル)

ジャンル:心理スリラー/ミステリ/歴史小説/YA小説/ロマンス

キーワード:孤立、宗教的偏見、初恋

賞:2014年エドガー賞候補(YA部門)

時代と場所は特定されていないが、18〜19世紀頃のキリスト教の戒律が厳しい英語圏の国の小さな村が舞台。

4年前、15歳と14歳の少女が相次いで姿を消した。そして、ひとりは川で死体でみつかり、もうひとりは2年後に舌を切り取られて戻ってきた。

歪んだ宗教観と倫理観にとらわれていた村人たちは、舌を切り取られて無言になったJudithを知的障害者とみなして軽視したり、疫病神のように避けたりしていた。他に行く場所がないJudithは、家族や村人からの残酷な仕打ちに2年間耐えてきた。だが、物心ついたときから恋をしていた幼なじみのLucasが他の少女と婚約し、絶望は深まる。


Judithが戻ってきたとき、村人たちは当然何が起こったのかを知りたかった。だが、彼女が沈黙を守ってきたのには複雑な事情があった。その理由のひとつは、Lucasだった。彼女を監禁し、舌を切ったのは、Lucasの父親だったのだ。村人はLucasの父親が火事で死んだと信じていたが、彼は森の隠れ家に住んでいたのだ。

 

何の罪もない犠牲者である主人公のJudithが、凝り固まった宗教的な倫理観により非難されて孤立している状態と、言葉と威厳を取り戻してゆく展開は、『洋書ベスト500』でもご紹介した、Laurie Halse AndersonのSpeakを連想させた。 読者は冒頭で「事件の真相」を想像すると思うが、物語が進むにつれ、それとは異なる真実が明らかになってくる。

JudithがLucasに”You “と語りかける1人称の文章は、ひとつひとつが非常に短く、文法も簡単なので分かりやすい。難しい洋書は苦手だが、子ども用の単純過ぎる本では満足できない人にピッタリの心理スリラーである。青春小説のような恋もあり、マイルドなロマンス本が好きな人にもおすすめ。

2014年エドガー賞候補。

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 助産師としてキャリアをスタート。日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 500 reviewer.

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