リリカルで、ミステリアスで、ダークな青春小説『We Were Liars』

著者:E. Lockhart

ハードカバー: 240ページ

出版社: Delacorte Press

ISBN-10: 038574126X

発売日: 2014/5/13

適正年齢:PG12(中学生以上)

難易度:中級レベル(シンプルな文章でページ数が少ない)

ジャンル:YA(ヤングアダルト)/青春小説/ミステリ・心理スリラー/家族ドラマ

キーワード:米国東海岸の裕福な家族、マーサズ・ヴィニヤード、ナンタケット、記憶喪失

 

Sinclair家は代々裕福でマサチューセッツ州を中心にした東海岸で権力を持つ一家だ(ケネディ家のような存在)。一家の当主であるHarris Sinclairとその妻はマサチューセッツ州のマーサズ・ヴィニヤード島とナンタケット島の近くに小さな島を所有しており、彼らの三人娘と家族たちは毎年この島で夏を過ごすのが慣わしになっていた。


Harrisの孫のCadence、Johnny、Mirrenの3人は同い年なので幼い頃から仲良くしてきたが、そこに叔母の新しい恋人の甥でJohnnyの親友Gatが加わり、4人は特別な夏だけの友情を育てた。

だが、4人が15歳になった夏、すべてがすっかり変わってしまう事件が起きた。

その事件で身体を壊したCadenceは激しい頭痛に襲われるようになり、高校を2年も留年することになってしまった。問題は、彼女が事件のことを何も覚えていないことだ。何度尋ねても、母は「自分で思い出すまでは言わないようにと医師に言われている」と答えるだけだ。

事件後、あんなに仲が良かったJohnnyやMirren,GatはCadenceが何度メールをしても無視している。彼らと会わなくなって2年たった夏、ようやく体調が少し回復したCadenceは久々に夏を島で過ごすことになった。Johnnyたちは以前のようにCadenceを暖かく迎えてくれるが、島の雰囲気はすっかり変わっていた。最初のうちはまったく事件のことを思い出せなかったCadenceだが、彼らの助けで次第に少しづつ記憶を取り戻していく。

 

この小説の舞台は架空の島だが、マーサズ・ヴィニヤード島やナンタケット島、そして個人が所有する島も実際にある。何代にもわたって裕福な家族は「オールドマネー」と呼ばれ、「持っていること」に慣れて、その特権を当たり前のように感じているところがある。それがこの小説のSinclair家だ。わが家も23年前からナンタケット島に小さな家を持っているが、あの島にはSinclair家のように背が高くてブロンドの美しい家族がよく徘徊している。Sinclair家とは宗教は異なるが、ケネディ家がそんな感じである。

だが、そういう何の不自由もない家族にも、必ずと言っていいほど何か暗い秘密や問題があるものだ。Sinclair家もそうである。Sinclair家のHarrisと3人の娘の関係は、「王様と3人の美しい娘」のお伽話のいろいろなバリエーションでだんだん明らかになる。また、それらを交えながら進むCadenceの1人称の語りがリリカルでミステリアスで、最近の青春小説 の中では非常に好感を抱ける。

ナンタケット島にある唯一のドーナッツ店が売っているドーナッツについても言及があるが、著者はこのあたりの風習を含めて土地鑑がある。だから、政治的には平等を支持しながらも個人的には偏見に満ちたHarris Sinclairの描き方にもリアリティがある。

しかし、事件の秘密については、ところどころにヒントがあるので、ミステリを読み慣れている人は「驚きの結末」にあまり驚かないかもしれない。それと、主人公と主要人物たちの人物像がいまひとつ浅い気もした。

完璧ではないが、一度読み始めたら最後までやめることができない「page-turner(ページをどんどんめくりたくなる本)」である。ページ数が少ないし、1人称の短い文章なので読みやすい。最近のYAの中ではおすすめの作品。

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