才能溢れる若き女性作家による詩的な歴史小説 『The Story of Land and Sea』

著者:Katy Simpson Smith

ペーパーバック: 256ページ

出版社: Harper

ISBN-10: 0062361961

発売日: 2014/8/26

適正年齢:大人向けの小説だが、PG12(中学生以上)

難易度:上級〜超上級の間(プロットを追うタイプの小説ではなく、詩的な表現が多い)

ジャンル:文芸小説/歴史小説

キーワード:アメリカ独立戦争、アメリカ南部の歴史、奴隷制度、プランテーション、愛情

 

アメリカ独立戦争時代(1770年代〜1790年代)の南部ノース・カロライナが舞台。

愛する妻に先立たれたJohnは、湾岸にある湿地帯の小さな町で妻の娘のTabithaを育てている。亡き妻Helenの父Asaはターペンタイン(松精油)のプランテーションを経営する裕福な男だが、大事に育てた娘を身内のない一兵卒にすぎないJohnに奪われたことを今でも恨んでいる。


Helenが死んだ後、突然宗教にすがるようになったAsaと、宗教を信じないJohnの間には、Tabithaを間に置いて、付かず離れずの冷たい関係が続いている。だが、Tabithaが黄熱(Yellow Fever)に感染し、二人の運命はふたたび変化する。

小説は三つのパートに分かれていて、パート1はJohnとTabithaが中心の現在、パート2はJohnとHelenの出会いまでの過去、パート3は、パート1の後の出来事という構成。

 

今年5月末のBookExpo America(BEA) で、編集者のイチオシ作品として紹介されていた文芸小説。

私が受け取ったのはARCだが、水彩画用の紙のような手触りのソフトカバーで、コストが相当かかっていることが想像できる。編集者もプレゼンで力説していたし、出版社のハーパーコリンズが力を入れていることが分かる。

読むと、確かに文章が素晴らしい。アメリカ独立戦争時代の南部の風景が、湿った風と一緒に読者を包む。登場人物の日に焼けた肌や、疲れきった奴隷の肌に光る汗すら見えてくる。だが、私が感じることができなかったのは、彼らの心だ。心動かされて当然の物語なのに、なぜか、雨具を着て泳いでいるような感じで、もどかしい。

(ここからは、ややネタバレ、というか先入観を与えるかもしれないので白字。カーソルで範囲を指定すれば読めます)

プロットを追う類の小説でないことは途中でわかってきたが、それにしても、読者が何をこの物語から得るべきなのか、最後まで不明なのだ。というか、言いたいことは分かるが、納得できなかったというほうが正しいだろう。たとえば、Helenが10歳のときに父親のAsaが誕生日のプレゼントとして与えた奴隷のMollや、Helen自身、そして彼らの微妙な友情に何の魅力を感じない。普通の人間が生きる ときに、都合の良いことは起こらないし、人生は不条理なものである。けれども、小説を読むときには、読者はそこから何かを得たいものである。

本書は、著者Smithの処女小説だ。テュレーン大学で歴史を教えているだけあって、歴史考察はしっかりしている。そして、文章も素晴らしい。最初からこんな小説が書けるのだから、才能があることは確かだ。

だが、心を奥底から揺るがすような「何か」が感じられなかった。それが非常に残念である。

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