少年の成長の葛藤を、軽く、そして重く描く話題の学園小説 Winger

著者:Andrew Smith
ペーパーバック: 464ページ
出版社: S&S Books for Young Readers
ISBN-10: 1442444932
発売日: 2014/5
適正年齡:PG12(中学生以上、男子高校生らしい下品なジョークや性的な話題あり)
難易度:中級〜やや上級(シンプルな文章だが、日本の教科書には出てこない日常的な単語や表現が多い)
ジャンル:青春小説(学園もの) / Green-Lit
キーワード:寄宿生私立高校(boarding School)、ラグビー、虐め、初恋、友情、差別、偏見

Ryan Dean West(苗字がWest、Ryan Deanの両方でひとつの下の名前という珍しいタイプ。Deanはミドルネームではない)は、たった14歳だが、Pine MountainというボーディングスクールのJunior(4年制高校の3年生)である。勉強ができるので2年飛び級し、12歳で高校を始めたのだ。


男子は高校になってから突然成長するので、二年の差は大きい。大人のような体つきになり始めている16歳の少年たちの間で、痩せっぽちの14歳として生活するのは楽なものではない。しかも、Ryan Deanは数々の難題に直面している。校則を破ったために、問題児が収容されるOpportunity Hallという寄宿舎に移されてしまったのだ。しかも、部屋を共有するルームメイトはラグビーチーム随一のイジメっ子である。

もうひとつの問題は、親友のAnnieだ。実はAnnieに恋しているのだが、相手は16歳。高校での14歳と16歳の差は大きい。子ども扱いするAnnieに腹を立てているRyan Deanは、恐ろしいルームメイトのガールフレンドに誘惑されて、ずるずるとひきずられてしまう。

ラグビー部のキャプテンJoeyは、思春期のホルモンに脳を乗っ取られているような言動をするRyan Deanをたしなめたり、危機を救ったりするが、彼には彼の複雑な問題がある。Joeyは自分がゲイだと公表しているが、それを快く思わない連中もいるのだ。
そのうえ、ラグビー部とアメリカンフットボール部との確執もある。

タイトルになっているWingerは、ラグビーでのRyan Deanのポジション(日本ではウィング)である。ウィングは、パスをもらってから走ってトライを取りに行くポジションで、足が速く、敏捷でなければならない。目立つ花型のポジションだが、思春期の少年にとってはそれですら劣等感に繋がるという部分がミソである。頭が良くて、運動もできるRyan Deanが自分を「Loser」だと思っているのは不思議だが、思春期というのは、そういうものかもしれない。

Ryan Deanが巻き込まれるゴタゴタの数々が、彼が描いたという設定の漫画を交えて進む。
男の子らしい身体の部分のジョークや性的ファンタジーなども可笑しく、軽く読み進めているうちに、読者は突然驚くような展開に直面する。

普通の子どもたちが登場するリアリスティックな青春小説でありながら、自然に社会問題を考えさせるような真摯な作品のことを、この分野で最も有名なJohn Greenにちなんで最近ではGreen-Litとか呼ぶ人がいるらしい。Smithの作品はGreenには及ばないが、Green-Litに属する良い作品だ。

日本では少年の体格のさほどの差はないし、ラグビーとアメフトの両チームがあるような高校はあまりないだろう。だから、そのまま理解はできないかもしれないが、思春期の少年の葛藤は成人女性である私が読んでも面白いし、ノスタルジックになれる。

YAについて語った紀伊國屋書店さんでのトークイベントのときに書店で見かけたので、ご興味がある人はぜひどうぞ。

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