現代の中流階級が隠し持つ社会問題を滑稽かつシャープに描く Big Little Lies

著者:Liane Moriarty
ハードカバー: 480ページ
出版社: Putnam Adult
ISBN-10: 0399167064
発売日: 2014/7/29
適正年齡:R(性的なシーンと言及はあるが、露骨な表現ではない。テーマが成人向け)
難易度:ネイティブの普通レベル(さほど難しくない文章だが、ニュアンスを汲み取る必要がある)
ジャンル:Chick Lit(女性小説)/大衆小説
キーワード:保護者同士の諍い/キャリアを持つ母親 vs. 主婦の争い/離婚/再婚/不倫/シングルマザー/ゴシップ/虐め/DV(ドメスティック・バイオレンス、家庭内暴力)

 

オーストラリアの海岸沿いの町に引っ越してきたJaneは、24歳の若さで5歳の息子を持つシングルマザー。入園前の児童を学校に招いて体験させる「幼稚園オリエンテーション」に向かう途中で同じオリエンテーションに向かう40歳の母親Madelineと出会う。


息子のZiggyが幼稚園オリエンテーションを楽しんだ様子にJaneはほっとしたが、直後にその安堵が覆される。ひとりの少女が、Ziggyに虐められたと訴えたのだ。しかも、クラスの親全員の前で。だが、Ziggyは「僕はやっていない」ときっぱりと否定して謝罪しない。被害者の少女の母親はバリバリのビジネスウーマンで取り巻きもいる。もともと姉御肌のMadelineは、そんな大きな敵を作ってしまったJaneを庇護することを決意する。

「巻き込まれたくない」と思いつつもMadelineチームに取り込まれてしまったCelesteは、富と美貌に恵まれているが、いつも、それを申し訳なく思っているかのように振舞っている。弁護士としていて働いていたこともあるというのに、専業主婦の今はどこかぼんやりとしている。

幼稚園オリエンテーションでの出来事は、そのまま忘れ去られるどころか幼稚園の教師やPTAのネットワークを巻き込んで手に負えないほど膨らみ、母親たちによるJaneやZiggyの虐めに発展していく。
そして、資金集めのための学校の恒例行事「Trivia night」の日にある事件が起こる……。

 

この小説には、「キャリアを持つ女性 vs 主婦」、学校への親の過剰な介入、親同士の競争心、嫉妬、シングルマザーの困難、思春期の子どもを持つ親の悩み、虐め、DV(ドメスティック・バイオレンス、家庭内暴力)……など現代の若い家族が抱える社会問題がぎっしり詰まっている。舞台はオーストラリアだけれど、アメリカとまったく変わらない。
普通の作家なら手に負えないほどの社会問題をてんこ盛りにしてひとつの小説にしてしまうところが、さすがMoriartyだと感心する。

そのうえ今回はミステリもなかなかのものだ。

主要なストーリーは、June、Madeline、Celesteの三人を中心に展開するが、ほかの保護者、教師、近所の女性、警官などの証言からトリビアの夜に誰かが死んだことが最初から明かされている。
だが、証言や感想(ゴシップ)に含まれているヒントでは、誰が死んだのか最後のほうまでわからないようになっている。あるときには「あの人かも?」と思わせ、次の証言では「では、あの人なのか?」と別の被害者を疑わせる。もちろん加害者もわからない。

キャリアを持つ女性とそれに対抗する主婦の描き方がカリカチュアなのは気に入らないが、一度読み始めたら最後までやめられない。昨年「これを読まずして年は越せないで賞」の候補に選んだ『The Husband's Secret』もそうだったが、これだけのページ・ターナーを連発できるMoriartyを敬服せずにはいられない。

一応「女性小説」のカテゴリに入る小説だけれど、男性が読んでも絶対に面白いと思う。「保護者同士の付き合いって怖い」と震え上がっていただくためにもぜひどうぞ。

 

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