ジャンルを超えて全米図書賞最終候補になったディストピア小説 Station Eleven

著者:Emily St. John Mandel
ハードカバー
出版社: Thorndike Pr; Lrg版
ISBN-10: 1410474178
発売日: 2014/12/10
適正年齡:PG15(性的な話題、バイオレンスはあるが、露骨な表現はない)
難易度:上級〜最上級(文芸小説らしい表現が多い。時、場所、語り手が移り変わる)
ジャンル:文芸小説/SF(ディストピア)/ミステリ
キーワード:インフルエンザ・パンデミック/サバイバル/シェイクスピア/終末論的な新興宗教/グラフィックノベル(漫画)
賞:2014年全米図書賞最終候補

 

吹雪の夜、トロントの劇場でシェイクスピアのKing Learを演じていたハリウッドの有名俳優Arthurがステージ上で心臓発作で急死する。

だが、劇場の外では、もっと大きな悲劇が世界を襲っていた。

潜伏期間が異常に短く致死率が99%のインフルエンザが急速に広まっていたのだ。人類の大部分が死滅し、電気、交通手段、コミュニケーション手段など、1000年以上かけて進化した文明が失われてしまう。


インフルエンザ流行から20年が経った現在、King Learの劇で子役を演じていた8歳のKirstinは、Traveling Symphonyの一員になっていた。あちこちに分散して生き残っているコミュニティを渡り歩いてシェイクスピアの演劇と音楽を提供するので、当然のごとく危険と背中合わせだ。それに、楽団に加わるまでには、全員が恐ろしい体験をしている。

二年前に訪問した村を再び訪問したとき、楽団は村の雰囲気がすっかり変わっているのに危機感を覚える。世紀末的な新興宗教が乗っ取ってしまったのだ。楽団は演奏後すぐにそこを離れるが、団員が次から次に姿を消す。消えたメンバーの探索に出かけたKirstinと親友は楽団から切り離され、単独で次の目的地に向かうことになる。

 

この小説の主要なストーリーは、人類の文明が終焉したディストピアでの人間の生き様である。
そこに、俳優Arthurの物語が編み込まれている。
Arthurはこれまで三回結婚しており、最初の妻Mirandaが描いたSFグラフィックノベル(日本の漫画とはやや異なる)に出てくるのが「Station Eleven」である。このグラフィックノベルの内容とシェイクスピア、そして、Arthurの二人目の妻と息子、Arthurの親友Clark、Arthurが心臓発作を起こしたときにステージに駆け上がって助けようとした救急医療隊員のJeevan、そしてArthurからグラフィックノベルをプレゼントしてもらったKirstinが主要人物である。

読んでいるときに連想したのは、Cormac McCarthyのThe Roadや、Peter HellerのThe Dog Starsである。
けれども、MandelのStation Elevenのほうが人類への希望を感じさせる。これは著者が若いからなのか、根本的な人類への信頼なのかは興味深いところだ。

ジャンルとしてはSFであり、そこに「Station Eleven」と新興宗教の謎も含まれていて少々ミステリ/スリラーの雰囲気もある。そのうえ、背景にシェイクスピアとグラフィックノベルが流れている。これまでも、ディストピア小説のThe Roadや、アトウッドのスペキュラティブ・フィクションは文芸小説として扱われてきたけれども、この作品はもっとジャンル小説に近い読み応えだった。ふだんから「ジャンル小説差別」を苦々しく思っているので、Station Elevenのようなジャンルを超えた小説が全米図書賞の最終候補になったのを喜ばしく思う。

 

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