The Hunger GamesやDivergentより複雑で読み応えがあるYAジャンルの新星 Red Rising三部作

著者:Pierce Brown
ペーパーバック: 400ページ
出版社: Del Rey(Random House)
ISBN-10: 1444758993
発売日:2014/1
適正年齡:PG15+(闘い、残酷シーン多し。性的話題も多い)
難易度:上級(ネイティブの普通レベル。SFに慣れていない人には状況把握は難しいかもしれない)
ジャンル:SF/スペースオペラ/YA
キーワード:惑星への移住/ディストピア/階級社会/革命/戦略/友情/裏切り/ラブストーリー
賞:Goodreads 2014年 Choice Award(新人作家のカテゴリで受賞、YAでは最終候補)

 

人類は何百年も前に死にかけた地球を離れて月をベースにし、近隣の惑星に移住するようになっていた。

Screen Shot 2015-01-08 at 3.38.14 PM無毛な争いを避けて社会を平和に保つため、人類は厳しく色分けされ、それぞれが社会の役割分担をするのが定着していた。

その階級ピラミッド(著者サイトか右の図をクリックすると、社会構造が読める)の最も底辺にいるのが髪と目の色が赤い「Red」で、支配者階級はブロンドの髪と金色の瞳を持つ体力的にも優れた「Gold」だ。この二つの階級の間に、軍人や警官の「Gray」、宇宙船の操縦に関わる「Blue」、医療や心理分野の科学に関わる「Yellow」、IT関連の「Green」、性産業の奴隷的存在の「Pink」などがある。


火星のテラフォーミングに必要なガスを地下で掘る役割をしているRedたちは、上の階級の者たちから「火星が人類にとって住める環境になるための崇高な仕事をしている」とプライドをくすぐることを教えこまれているが、現実はただの奴隷である。地下の世界から一歩も出ることは許されず、少しでも規則を破ると「反逆罪」として絞首刑にされる。

ガス採掘場で最も危険で尊敬もされるHelldiverをしている16歳のDarrowは、幼馴染みのEoと結婚し、ささやかな暮らしをしているだけで幸せだった。けれども、ある悲劇がDarrowに馴染みある世界を崩壊させてしまう。

社会革命を目論む地下組織Sons of Aresの手配で、DarrowはGoldに作り替えられ、Aresの謎の使命でエリート士官を育てる学校に入学する。

Darrowの使命は、この学校をエリートとして卒業し、船長になって地下組織に軍艦という大きな武器を与えることだ。使命を果たすために残酷な試練を次々と乗り越えるうち、Darrowはあれほど憎んでいたGoldたちと友情すら抱くようになっていく。

 

新人作家Brownの三部作「Red Rising」は、2014年1月に発売されてから、タイトルのようにすごい勢いでrisingしてきた。どんな作品か気になっていたのだけれど、近年大流行したThe Hunger Games、SFのクラシック化しているEnder's Game、テレビドラマで大人気のSong of Ice and Fire(A Game of Thrones)シリーズとよく比べられるため、それらに食傷気味になっていた私はキンドルにダウンロードしたまま放置していた。

でも、あまりにも読者評価が高いので、一応チェックだけはしてみようと思って手にとった。そうしたところ、The Hunger Gamesや最近人気になったDivergentよりもずっと複雑で面白く、一気に読み終えてしまった。

Brownの描く未来の社会では、人類は遺伝操作で細かく色分けされている。現代社会の人種差別や過去の階級社会を誇張したような社会であり、単純に肌の色が黒いものが白い者に差別されるというものではない。DarrowとEoが16歳という若さで結婚しているのは、過酷な労働を強いられるRedの平均寿命が短いからだ。若くして子供を産まないと死滅してしまうから、人生のサイクルがほかの人種より早くなるように遺伝操作されているのだ。また、異人種同士での結婚は固く禁じられているだけでなく、妊娠もできないようになっている。ほかの人種はGoldを神として崇めるよう教えこまれ、Goldのほうは下層階級の人種のことを同じ人間とはみなしていない。

Redの社会しか知らずに育ったDarrowは、エリート士官を育てる学校で、甘やかされて楽に暮らしていると想像していた支配階級のGoldの世界の厳しさに驚く。家族の絆や愛情を重んじるRedとは異なり、Goldは身内や友人に対しても残酷になれる。Darrowが体験するエリート学校の状況は、たしかにThe Hunger GamesやHarry PotterのHogwartsを連想させる。そこが、Harry Potterで育った若い著者らしいところだ。

この学校でもうひとつDarrowが知ったのは、GoldもRedのような感情を持つ人間だということだ。個々の人間を知らないうちは心底憎む敵でしかなかったのに、一緒に暮らし、闘ううちに深い友情や愛情を育ててしまったのだ。だが、心を通わせようとして近づく者に自分の素性や真の目標を知られるわけにはいかない。Darrowは輝けるスターになっていくが、どんどん孤独にもなる。闘いの演習や天才の孤独については、とてもEnder's Gameだ。

表面的には優雅なGoldたちだが、裏では常に敵対する家族を倒す残酷な策略を練っている。
特に、特に、先日刊行されたばかりの第二部『Golden Son』では、憎む者と手を組んだり、友人を遠ざけたり、裏切られたり、まさにSong of Fire and Iceだ。残酷シーンが多いところも。

主人公のDarrowは、女性読者が憧れるよりも、男性読者が自己投影したくなるキャラだろう。
頭脳明晰で、(Curvingと呼ばれる手術の結果とはいえ)肉体的に優れているし、策略家で、冷酷な判断も下すが、純粋な愛を信じ、理想を捨てない。Redとしての自分を忘れそうになっているのではないか、残虐になりすぎていないか、と悩み苦しむところにも好感が抱ける。(それがつまらないと思う人もいるだろうが)

ネタバレになるので詳しくは書けないがロミオとジュリエット的なラブストーリーもあり、アクションも多く、エンタメ度が高いSFだ。5年前に大学を卒業した著者Brownは、IT関連のスタートアップ会社でソーシャルメディアのマネジャーをしたり、ABC、NBC、ディズニーで下働きをしたりしながら物書きを目指してきた。そういったメディアでの仕事や上院議員の選挙を手伝った体験が、この三部作にも活かされている。

YAジャンルのSFのジャンルに入っているが、マーケティングとしての決定であろう。メインの読者層は20代から30代の若い男性だと思うが、実際には普通のスペースオペラとしてとらえるべき作品である。ダークで、バイオレントなので、そういった本が嫌いな人は避けたほうがいいだろう。二作続けて読んだ私は、正直ちょっと疲れた。

1月に発売された二部の『Golden Son』もCliff-hanger(続きが気になる終わり方)なので、それが嫌な人は最終部の『Morning Star』が発売されるまで待ったほうがいいかもしれない。

 

 

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