著者:Lori Roy
ハードカバー: 336ページ
出版社: Dutton (2015/6/2)
ISBN-10: 0525955070
発売日: 2015/6/2
適正年齢:PG15+(性的コンテンツあり)
難易度:上級レベル(英語ネイティブの普通レベル)
ジャンル:ゴシックミステリ
キーワード:アメリカ南部、迷信、伝承、幽霊、オカルト、殺人、絞首刑
1952年アメリカ・ケンタッキー州の小さな町では、15歳と16歳のちょうど真ん中に少女は大人になる。その年頃になった少女が夜中に井戸の中をのぞき込むと、将来自分が結婚する相手の顔が見えることになっている。
Annie Holleranは、夜中に家業のラベンダー畑を駆け抜けて隣のBaine家の井戸を覗きに行く。けれども、望んでいた顔を井戸の底にみつけることはできず、かわりに死体に躓く。この事件をきっかけにHolleran家とBaine家の暗い過去が浮かび上がってくる。
16年前、この町でアメリカで最後の公開絞首刑が執行された。
死刑になったのはJoseph Carl Baineだ。Baine家の7人の息子の中で一番優しかったJoseph Carlがあんなにおぞましいことをしたのは、Annieの叔母のJunaが魔法をかけたからだと人々は噂した。Junaはその直後に姿を消した。
15歳になったAnnieは、母親の妹だと信じていたJunaが自分の母親だということを確信するようになる。噂が本当であれば、父親はJoseph Carlなのだ。何が起こったのか誰もはっきりと語らないが、ブロンドなのに瞳が真っ黒なJunaが暗い魔力を持っていると信じていた町の人々は、母親とそっくりになってきたAnnieとも目を合わせない。
Annieには人々が恐れるような魔力はないが、未来や深い真実を察知するknow-howの能力がある。南部にはこの能力を持って生まれる女がたくさんいて、Annieとは血が繋がっていない祖母もそうだ。Annieだけでなく、祖母も近いうちに何か大きな異変が起こると感じている。Annieは実の母のJunaが戻ってくると信じ、不吉な予感を覚える祖母はAnnieを守ろうとやっきになる。
そして、Annieの父と母の仲に亀裂を入れるような過去の存在が町に戻ってくる……。
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処女作でエドガー賞の新人賞を受賞し、二作目もエドガー賞の最終候補になったLori Royの6月発売予定の最新作は、現在流行りのミステリとはひと味違う。
最初は「ホラー小説」か「オカルト小説」だと思ったほど不気味な雰囲気が漂っている(実際に少しオカルトともいえる)。また、アクションが次々に起こるテンポが早い最近の小説に比べて、もどかしいほどゆっくりと展開していく。まるで古い小説を読んでいるような感覚だ。
ふたつの時代、ふたつの異なる女性の視点、因縁……。これらが入り混じって混沌としていた筋書きが、読み進めるうちに明らかになっていくのがフォークナー的だ。このユニークさからも、エドガー賞候補が期待される作品だ。