『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』が破壊した仕掛け人たちの家族 After Perfect

著者:Christina McDowell
ハードカバー: 320ページ
出版社: Gallery Books
ISBN-10: 1476785325
発売日: 2015/6/2
適正年齢:PG15(高校生以上)
難易度:中級(シンプルな文章)
ジャンル:回想録
キーワード:Jordan Belfort, The Wolf of Wall Street, 金融詐欺、ペニー株、資金洗浄、アメリカの大金持ち、ハリウッドの暗黒
オーディオブック:著者本人が読んでいて、聴きやすい。

1990年代にペニー株(株価が1ドル以下の安い株式のこと)詐欺、相場操縦、資金洗浄などの違法行為で逮捕されたJordan Belfortの回想録The Wolf of Wall Street(邦題は、ウォール街狂乱日記―「狼」と呼ばれた私のヤバすぎる人生)は、ディカプリオがマーティン・スコセッシ監督と組んで映画化した『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』で有名になった。

コツコツ貯めたお金をBelfortのペニー株詐欺や相場操縦で失った犠牲者たちのことはよく知られているが、夫や父親が金融詐欺に関わっていると知らなかった家族たちの人生もじつはめちゃくちゃになっていたのである。

本書『After Perfect』の著者Christinaの父親は金融関係の弁護士で、家族はワシントンDCの巨大な豪邸に住んでいた。チャリティパーティを采配する母親は女優のように美しく、両親の友人はアリアナ・ハフィントンやアラン・グリーンスパン夫婦など政治、経済で活躍する大物揃いだった。選ばれた者だけがメンバーになれるカントリークラブで有名人の子供たちと遊び、夏はナンタケット島の別荘で過ごし、高校卒業のプレゼントにBMWの新車をプレゼントされる生活をしてきたChristinaは、自分の生活レベルに疑問も抱いたことがなかった。

だが、Christinaが大学一年生1のとき突然父親がペニー株詐欺の容疑で起訴される。
自分の罰を軽減するためにJordan Belfortは金融詐欺を行った知り合いを通告して証言する取引を交わしており、Christinaの父もそのひとりだったのだ。

家や車など所有物のすべてが差し押さえになり、貯金どころか巨額の借金があると知らされた母と3人の娘は、ショック状態のまま機能不全状態になっていく。Prousalis家では「お金のことを話すのは下品」とみなされていて、父がすべてを取り仕切ってきた。父親が自分の仕事の内容を話したがらないので、誰も彼の仕事について詳しいことは知らなかった。美しく着飾り、社交界で一目を置かれる存在であることが「仕事」だったChristinaの母は現状否定のうつ状態になり、子どもたちを守るために立ち上がろうとはしない。

Christinaの父親が騙したのは詐欺の相手だけではなかった。彼は19歳の娘をうまく言いくるめて政府が見つけにくい銀行口座とクレジットカードを作らせ、巨額の借金を作ったのだ。Christinaは後に父親の裏切りを知るが、それでも父親を訴訟したくなくて借金を背負い続け、ホームレスにならないために低賃金の怪しくいかがわしい仕事にも手をつける。

LA Weeklyに掲載されたChristinaの批判
LA Weeklyに掲載されたChristinaの批判

自分自身は罪をおかしていない家族の人生は破壊されたのに、Jordan Belfortはたった2年の懲役で出所し、回想録と映画で再び大金持ちになっている。そして、娘を犠牲にしたChristinaの父親も出所後に若い女性と再婚して新しい人生を始めている。多くの人々を犠牲にした罪人をまるでスターのようにもてはやす『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』の映画化にLA Weeklyで反論したChristinaを、父親は公の場で批判した。

彼の手紙も読んだが、いかにも弁護士らしい巧みな話術で現実を歪めて自分の娘を悪者にしようとしているのが見える。(でも自分のことを一人称ではなく”Your father”と書き続けるところに第三者を常に意識する彼の傲慢さがみえる)。2013年のこの出来事が、Christinaにこの回想録を書く決意をさせたのかもしれない。

出版社の著者情報
出版社の著者情報

幼い頃から女優になることが夢で、マイナーな女優としてテレビや映画に出演してきたChristinaは、たしかにゴージャスな美人だ。19歳までは一般人が想像もできないような贅沢な暮らしもしてきた。美と金の両方を持っていた彼女は、本当に幸せだったのだろうか?

19歳から現在までのChristinaの生き様を読むと、金持ちでも美人でもなく、ジミー・チューの靴やエルメスのバーキンにまったくときめかない自分がすごくラッキーに思えてくる。

Cakesの連載でアメリカの大金持ちについて書いたが、一般人が思うほど金持ちの生活は羨ましくないものだ。「私だって美人で金持ちに生まれていたら……」と人生の言い訳をするよりも、自分に与えられた材料で地道に生きていくほうがよほどラッキーだ。

人を騙してまで巨額の金をゲットしても、お金とはこんなにあっさりとなくなるものなのだ。まことに諸行無常で盛者必衰、春の世の夢のごとし…だ。

つくづくそう思わせてくれる本なのでおすすめ。

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